第13話「届けないと困ります」
朝一番。
町工場から依頼票が来た。
《冷却部品 二個》
《予備 一個》
《二個目使用予定 十五時》
《通常便 十四時三十二分》
ぱむちゃんは紙を見る。
時間は足りている。
戻す。
◇
九時。
電話。
世達ちゃんが受ける。
「はい。十四時三十二分の予定です」
少し聞く。
「十五時から使用ですね」
また聞く。
「明日の分ですか」
ぱむちゃんが振り返る。
世達ちゃんは紙を一枚増やした。
《明日 冷却部品》
電話を置く。
「工場長からです」
ぱむ。
「今日ではなく、明日の到着時刻を確認したいそうです」
◇
町工場。
午後の工程表が壁に貼られていた。
十五時。
《二号機 部品交換》
その下。
明日九時。
《三号機 点検》
横に鉛筆。
《ぱむ便 八時四十分想定》
工場長が電話を切る。
「昨日、休みでも回っただろ」
作業員が言う。
「なら明日も通常便でよくないですか」
「九時には欲しい」
「点検ずらせば?」
「ずらせる」
工場長は工程表を見る。
「でも、来るならずらさなくていい」
消しゴムは使わなかった。
◇
昼。
坂上団地。
薬を受け取った老人が、娘に紙を見せる。
病院の予約票。
《明後日 十時三十分》
「これ、ぱむちゃんの日だろ?」
「ぱむちゃんの日なんてないよ」
「でも大体来る」
娘が予約票を見る。
「薬が届くなら、この時間が一番楽なのはそうだけど」
老人は鉛筆で丸をつけた。
娘は消さなかった。
◇
午後。
病棟。
看護師が在庫表を持っていた。
「明日、接続ありますか?」
ぱむ。
「分からないですよね」
自分で答える。
棚には半分。
隣棟へ回す予定の箱が床にある。
「これ、今日回すか迷ってて」
ぱむちゃんは箱を見る。
看護師を見る。
「聞いても決めてもらえないか」
少し笑う。
箱を持ち上げる。
「じゃあ半分だけ回します」
二箱のうち、一箱だけ台車へ載せた。
◇
夕方。
配送口に、明日の依頼票が十三枚あった。
今日の未処理ではない。
明日の紙。
世達ちゃんが一枚ずつ確認する。
《八時までに届く場合、朝便を減らします》
《十時までなら予約変更なし》
《届くなら在庫移動を中止》
《来られない場合は通常経路へ》
命令は一枚もない。
全部、条件文だった。
ぱむちゃんは一番上を取る。
町工場。
《可能でしたらお願いします》
裏。
《来ない場合 点検を十一時へ変更》
ぱむちゃんは紙を戻した。
◇
閉店前。
工場長からもう一度電話が来た。
世達ちゃんが受ける。
「はい」
『明日、来るかだけ分からない?』
「確約はしていません」
『困るんだよなあ』
少し間。
『いや、来ないなら来ないで変えるんだけど』
世達ちゃんは返事を待つ。
『来るか分からないのが、一番組みにくい』
「そのまま記録します」
電話を切る。
世達ちゃんは依頼票の余白へ書いた。
《困ること:未確定》
ぱむちゃんが見る。
その下には、まだ何も書かれていない。
《ぱむちゃん:》
世達ちゃんは埋めなかった。
ぱむちゃんも、埋めなかった。




