第12話「休みの日」
朝。
ぱむちゃんは配送口へ行かなかった。
厨房の前で、空いたトレーを重ねる。
ぱむ!
テーブルを拭く。
子どもが落としたストローを拾う。
「ありがと」
ぱむ!
普通のPANDEMONIUM BURGERの仕事だった。
◇
配送口でベルが鳴る。
ぱむちゃんは振り返る。
至誠ちゃんが箱を持ち上げた。
「こちらで行きます!」
ぱむ。
ぱむちゃんは布巾を持ち直した。
◇
十時。
坂上団地から薬。
《今日中》
《予備 二日分》
世達ちゃんが確認する。
「夕方便で足ります」
ぱむちゃんは紙を見る。
持たない。
◇
十一時。
町工場。
《冷却部品》
《機械停止見込み 十五時》
《予備 一個》
今日必要なのは二個目だった。
通常便、十四時四十分。
至誠ちゃんが時計を見る。
「私が行っても同程度です! 通常便を先に押さえます!」
ぱむ。
ぱむちゃんは紙を渡した。
◇
十二時。
ベル。
一回。
二回。
三回。
ぱむちゃんは客席の椅子を直していた。
誰も呼びに来ない。
一時過ぎ。
パン屋の自転車が店の前を通った。
荷台に三箱。
店主が窓越しに手を上げる。
ぱむちゃんも両手を上げた。
◇
二時。
世達ちゃんが結果だけ持ってくる。
「町工場、十四時三十二分到着予定です」
ぱむ!
「病棟は隣棟から融通しました」
ぱむ!
「坂上団地は夕方便です」
ぱむ!
ぱむちゃんは厨房へ戻る。
◇
三時十二分。
ベル。
今度は、世達ちゃんが紙を持ってこなかった。
ぱむちゃんの方から配送口へ行く。
一枚だけ、赤い札。
《保育園 代替食》
《必要 三時三十分》
《他園在庫 あり》
《受取担当 移動中》
《到着見込み 三時三十七分》
その下。
《間に合わない場合 一名のみ別室で待機》
ぱむちゃんは読む。
紙から手を離す。
一歩戻る。
厨房を見る。
配送口を見る。
また紙を見る。
ぱむ。
紙袋を持った。
誰も渡していなかった。
◇
三時二十二分。
保育園。
調理員が走ってくる。
「今日は休みじゃなかったの?」
ぱむ。
「頼んでないよ、ぱむちゃん指定では」
ぱむ。
箱を差し出す。
調理員は受け取らない。
「いいの?」
ぱむちゃんが、もう一度差し出す。
ぱむ!
受け取る。
◇
教室。
おやつの皿が並ぶ。
一つだけ、まだ空いている。
箱が開く。
同じ時間に、一つ増える。
子どもは何も知らずに食べ始めた。
ぱむちゃんは廊下から見て、戻った。
◇
夕方。
配送口に未処理はなかった。
《ぱむちゃん 一》
《通常便 九》
《クルー 四》
《地域経路 六》
世達ちゃんが紙を机へ置く。
「二十件、完了です」
ぱむ!
ぱむちゃんは自分の一件を見る。
その横に、勤務欄。
《配送担当 休み》
世達ちゃんは直さない。
ぱむちゃんも直さない。
◇
翌朝の箱。
七枚。
《可能でしたら、ぱむちゃんにお願いします》
ぱむちゃんは一枚目を取る。
裏を見る。
《通常経路 あり》
戻す。
二枚目。
《通常経路 なし》
少し見る。
それも戻す。
まだ開店前だった。
ぱむちゃんは厨房へ行った。
配送口には、誰かが来るまで誰も立たなかった。




