第8話「つながりました」
十二時七分。
配送口の扉の向こうに、無人のホームがあった。
ぱむちゃんは紙袋を持つ。
冥理ちゃんが時計を見る。
「昨日と同じ空白です。原因はまだ決めません」
ぱむ!
ホームへ降りる。
◇
売店のシャッターだけが半分開いていた。
中から女が出てくる。
「今日も来た」
ぱむ。
紙袋を渡す。
パン。
水。
乾電池。
女は受領票へ署名する。
「昨日、あなたが来たあとね」
シャッターの内側を指す。
小さな紙が貼ってある。
《十二時七分まで待つ》
「仕入れを一日分減らしたの」
ぱむちゃんが止まる。
「来るなら、持ちすぎなくていいと思って」
ホームの時計が十二時八分になる。
景色が薄くなる。
「明日も来る?」
ぱむちゃんは答えない。
女も追わない。
「分かった。明日の分は残しとく」
◇
店へ戻る。
受領票の裏に、ぱむちゃんが書く。
《在庫 一日分減》
冥理ちゃんは《十二時七分》の横に丸をつけない。
「二回通れました。でも、三回目の保証にはしません」
ぱむ。
◇
午後。
《昨日だけ存在した病棟》
依頼票には、新しい備考があった。
《昨日届いたので、今日の交換分は置いていません》
夢幻ちゃんが読む。
「昨日と同じ時刻にしても、昨日にはならないねえ」
ぱむ。
「でも、待ってる人は昨日より先に進んでる」
照明が一度暗くなる。
白い扉。
ぱむちゃんが開ける。
病室。
受取人の男は、もう上着を着ていた。
「退院なんだ」
足元に小さな鞄。
「昨日の荷物が届いたから、書類が揃った」
ぱむ!
「今日はこれを返したい」
男が空になった保冷箱を差し出す。
依頼票にはない。
ぱむちゃんは箱を見る。
男を見る。
「頼んでもいい?」
ぱむ!
受け取る。
扉を出る。
閉じる。
消える。
◇
三件目。
出口のない商店街。
前回届けた店の前に、台車が置いてあった。
荷物が三箱。
店主がぱむちゃんを見る。
「帰れるんだろ?」
ぱむ。
「じゃあ、これも向こうへ持ってってくれないか」
彷徨ちゃんが路地を見る。
「あらあら。前と同じ帰り道とは限りませんねぇ」
「でも前は帰れた」
店主は台車を押す。
「こっちから出せるなら、仕入れも増やせるんだ」
ぱむちゃんは三箱を見る。
依頼票は一枚。
今日届ける紙袋だけ。
ぱむちゃんは紙袋を渡した。
《配送完了》
三箱には触れない。
「駄目か」
ぱむ。
店主は少し考える。
一箱を台車から下ろした。
「じゃあ明日、ちゃんと頼む」
◇
帰り道。
七本目の路地を左。
壁。
彷徨ちゃんが止まる。
「違いますねぇ」
ぱむ。
「帰り道は帰る時に探します」
二人は戻らない。
八本目。
階段。
十三段。
換気扇の風。
その方向へ進む。
PANDEMONIUMの倉庫へ出た。
◇
夕方。
三枚の受領票。
世達ちゃんが横へ、結果ではなく変化を書く。
《駅売店 在庫減》
《病棟 退院》
《商店街 搬出相談》
ぱむちゃんは、持ち帰った空の保冷箱をその下へ置いた。
昨日は、三か所へ届いただけだった。
今日は、三か所の方が動いていた。




