第5話「遠くても近いです」
受付票の上に、コピー屋の用紙が重ねられていた。
《通常経路 十一日》
《期限 今日》
《代替手段 なし》
住所は長い。
《第六観測圏/黄砂海西岸/旧気象塔》
届ける物は、銀色の留め具ひとつ。
世達ちゃんが小袋を机へ置く。
「観測機の外蓋用です。蓋が固定できなければ、今夜の観測は中止になります」
ぱむ。
「現地調達はできません」
用紙の隅には、知らない筆跡がある。
《ぱむちゃん配送なら間に合うと聞きました》
ぱむちゃんはそこを見た。
それから袋を持った。
◇
配送口を出る。
床が消えた。
赤い砂。
雲が下を流れている。
遠くに旧気象塔。
摩天ちゃんが一歩だけ前へ出た。
「風が三層ある。下は戻される。上は持っていかれる」
ぱむ。
「真ん中を取る。袋は離すな」
ぱむ!
◇
最初の裂け目は狭かった。
ぱむちゃんが跨ぐ。
二つ目は広い。
向こう岸が上下している。
摩天ちゃんが先に渡る。
「今だ」
ぱむちゃんが跳ぶ。
着地。
小袋が風に鳴る。
両腕で抱える。
◇
途中で、赤い砂の斜面に金属板が刺さっていた。
《旧気象塔 保守便》
矢印は、空を指している。
その下に錆びた箱。
蓋を開ける。
空。
伝票だけが残っていた。
《到着予定 九日前》
ぱむちゃんが見る。
摩天ちゃんも見る。
「通常便の跡だ」
ぱむ。
「止まった理由は後でいい。今は塔へ行く」
進む。
◇
旧気象塔。
作業員が扉を開けた。
「来た?」
ぱむ!
「本当に来た」
銀色の留め具を受け取る。
屋上へ走る。
観測機の蓋。
風で何度も浮く。
留め具を差す。
かちり。
蓋が止まった。
作業員はその場に座り込んだ。
「これで今夜が見られる」
ぱむ。
《配送完了》
◇
帰り。
さっきの保守便の箱を通る。
ぱむちゃんは止まる。
空箱を見る。
伝票を見る。
持って帰らない。
摩天ちゃんも触れない。
「別の仕事だ」
ぱむ。
◇
店。
経過時間、九分。
世達ちゃんが記録する。
《通常経路 十一日》
《今回 九分》
その下へ、もう一行。
《通常便 現地未着を確認》
ぱむちゃんは五枚の新しい依頼票を見る。
全部、遠距離。
一枚目。
《通常経路 二日》
二枚目。
《通常経路 三時間》
三枚目。
《通常経路 翌朝》
四枚目。
《通常経路 運行中》
五枚目だけ、
《通常経路 なし》
ぱむちゃんは五枚目を取った。
残り四枚を世達ちゃんの机へ戻した。
世達ちゃんは数字だけを見た。
「確認します」
ぱむちゃんは、九分とは書かれていない方の札を持った。




