第4話「みんな知ってます」
憧憬ちゃんは、配送口の床に三枚の紙を並べていた。
坂上団地。
病院。
老人ホーム。
「ぱむちゃん、そこ☆」
ぱむ。
「紙袋は胸の前。顔より、袋と札が同時に入る方がいい!」
ぱむちゃんが持ち直す。
撮影音。
「もう一枚。今度は完了票なし!」
ぱむ?
「完了票を入れると、『この場所なら届く』って写真になるでしょ?」
憧憬ちゃんは画面を見せる。
「今日は、ぱむちゃんが配送してるってことだけ見せたいの☆」
ぱむ!
◇
掲示板。
選ばれた写真の下には、短く書かれた。
《今日も配送中☆》
場所は書かない。
件数も書かない。
《何でも》も《必ず》もない。
憧憬ちゃんは一歩下がる。
「これなら盛ってない☆」
ぱむ!
◇
昼。
客が掲示板を撮った。
その場で誰かへ送る。
「これ、この子だよ」
「団地の?」
「病院にも来たって聞いた」
別の客が画面を覗く。
「老人ホームの写真もこの子?」
「たぶん」
憧憬ちゃんが振り返る。
「『たぶん』?」
客はもう別の写真を見せていた。
商店街の掲示板。
ぱむちゃんの写真。
下に手書き。
《急ぎも相談できます》
「これ、うちが作ったのじゃないよ☆」
◇
商店街。
同じ写真が三か所にあった。
コピー屋。
薬局。
惣菜屋。
文字は全部違う。
《通常便で間に合わない時》
《困ったらPANDEMONIUMへ》
《ぱむちゃん配送》
憧憬ちゃんが一枚ずつ撮る。
「写真は同じなのに、説明が増えてる」
ぱむ。
「消す?」
ぱむちゃんは薬局の紙を見る。
その横に、営業時間と通常配送の時刻表。
惣菜屋の紙には、
《無理なら断られます》
と小さく足されている。
ぱむちゃんは首を横に振った。
◇
帰り道。
知らない子供が指をさした。
「ぱむちゃん!」
ぱむ!
「何でも届ける子!」
母親がすぐ訂正する。
「何でもじゃないよ」
「じゃあ、何を?」
母親が止まる。
ぱむちゃんも止まる。
「……困った時の?」
ぱむ。
子供は納得した顔で走っていった。
◇
店へ戻る。
掲示板の写真は朝のまま。
《今日も配送中☆》
その下に、誰かが付箋を貼っていた。
《受付用紙はコピー屋》
世達ちゃんが剥がす。
「それは正式情報ではありません」
剥がした跡に、もう一枚あった。
《急ぎは先に期限を書く》
憧憬ちゃんがカメラを下ろした。
ぱむちゃんは二枚目の付箋を見た。
店が出した写真は、一枚だけだった。




