第3話「一件だけなら」
朝。
昨日の段ボール箱は、配送口の外へ出されていた。
《急ぎの配送はこちら》
文字の上に、秩序ちゃんが紙を貼っている。
《PANDEMONIUMの正式受付ではありません》
その横で世達ちゃんが七枚を読んでいた。
「捨てるわけにもいきません。もう預かってしまっていますから」
ぱむ。
「今日だけ整理します」
◇
町工場の部品。
昨日の男が取りに来た。
「取引先便で届きました」
ぱむ!
「こっちに置いた部品、同じ物でした」
二個になった部品を見て苦笑する。
「急いでると、二か所に頼むんですね」
持って帰る。
◇
上着。
保育園へ電話すると、職員が言った。
「予備を着せました。お母さんにも連絡つきました」
世達ちゃんが票の端へ書く。
《不要》
薬。
薬局へ確認。
「処方薬ではありません。通常便が夕方にあります」
《通常経路あり》
鍵。
持ち主本人が来た。
「合鍵ありました」
《解決済》
ぱむちゃんは減っていく紙を見る。
七枚が三枚になる。
◇
最後まで残った一枚は写真だった。
商店街の写真店。
《老人ホーム 十五時まで》
裏。
《明日転居。今日の送別会で渡したい》
時計は十四時三十七分。
世達ちゃんが電話を置く。
「通常便は明朝です」
ぱむちゃんは写真の封筒を持った。
ぱむ。
「お願いします」
◇
老人ホーム。
食堂には紙の花が吊られていた。
テーブルの中央に、空いた写真立て。
「来た!」
職員が封筒を受け取る。
中は集合写真だった。
窓際の老人が手招きする。
「こっちへ入れてくれ」
職員が写真立てへ差す。
老人が隣の人を指す。
「こいつ、三年前は髪あったんだぞ」
「お前もな」
笑い声。
ぱむちゃんは一歩下がった。
◇
翌朝。
段ボール箱はなくなっていた。
代わりに、世達ちゃんの机に一枚の紙がある。
《確認用》
《通常経路》
《期限》
《代替手段》
ぱむちゃんが見る。
「昨日、七件を確認するのに同じことを何度も聞きました」
世達ちゃんは紙を半分に折る。
「受付票ではありません。私たちが確認するための紙です」
ぱむ。
昼。
知らない女が配送口へ来た。
「これ、先に書けばいいんですよね?」
世達ちゃんの紙と同じ項目が印刷されている。
《通常経路 なし》
《期限 今日》
《代替手段 なし》
世達ちゃんが自分の机を見る。
確認用の原本は、そこにある。
「……どこで、その用紙を?」
「商店街のコピー屋さんです。これを書けば話が早いって」
女の後ろに、もう一人並んでいた。
同じ紙を持っている。
さらに入口の外に、三人目がいた。
世達ちゃんは折った原本を開いた。
まだどこにも、
《受付票》
とは書いていなかった。




