第20話「手伝っていいですか」
百二十番。
昨日の河川敷だった。
川瀬は管理小屋の前で、折り畳み椅子に座っていた。
右足首に包帯。
「また俺?」
ぱむ!
「昨日の救助代じゃないよな」
ぱむちゃんは札を見せる。
《百二十番 昼食》
「普通の注文か」
紙袋を受け取る。
《配送完了》
◇
小屋の横では、昨日の同僚が赤い測量杭を車へ積んでいた。
三本。
一本が荷台からずれる。
ぱむちゃんの手が動く。
途中で止まる。
同僚を見る。
「ん?」
ぱむちゃんは杭を指す。
それから自分を指す。
「手伝うってこと?」
ぱむ!
「いや、いい。今日は二人いるから」
ぱむ。
手を下ろす。
同僚が杭を押し込む。
今度は落ちなかった。
◇
「昨日なら、もう持ってたよな」
川瀬がバーガーの包みを開く。
ぱむちゃんが振り返る。
「俺の足も。何も聞かず支えた」
ぱむ。
「あれは聞く暇なかったか」
ぱむ。
川瀬が笑う。
「じゃあ、これは?」
椅子の横。
水筒が地面に落ちている。
川瀬は包帯の足を見た。
ぱむちゃんは水筒を見る。
川瀬を見る。
自分を指す。
水筒を指す。
「拾ってくれる?」
ぱむ!
拾う。
渡す。
「ありがとう」
ぱむ。
◇
食べ終わるころ、風が強くなった。
点検表が机から飛ぶ。
「あっ」
ぱむちゃんが踏む。
一枚止まる。
二枚目は川へ向かう。
同僚が走って取った。
三枚目は川瀬の椅子の下。
川瀬が手を伸ばす。
届かない。
ぱむちゃんは川瀬を見る。
「それもお願い!」
ぱむ!
拾う。
◇
風が止む。
三人で紙を揃える。
川瀬が一枚ずつ番号を見る。
「昨日は杭を持って帰って、俺が運ばれた」
同僚が鼻で笑う。
「今日は紙だけで済んだな」
「俺、座ってただけだけど」
「それでいいんだよ」
川瀬は少し黙った。
ぱむちゃんを見る。
「頼む方も、慣れないとな」
ぱむ。
◇
店へ戻る。
百二十番の裏。
ぱむちゃんは鉛筆を置く。
《水筒》
書く。
《点検表》
書く。
その横に小さく、二つとも同じ印をつける。
《頼まれた》
至誠ちゃんが覗く。
「新しい記号ですか!」
ぱむ。
「規則にします?」
ぱむちゃんは少し考える。
首を横に振る。
「では、記録だけ!」
ぱむ!
◇
次の配送。
玄関で女性が紙袋を受け取った。
《配送完了》
「ありがとう」
ぱむちゃんは一歩下がる。
女性の後ろで、傘立てが傾いている。
手は出さない。
傘立てを見る。
女性を見る。
女性も傘立てを見る。
「これは自分で直す」
ぱむ。
ぱむちゃんは帰った。
受領票の裏には、何も増えなかった。




