↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/100

第12話「配送係ですよね」


 百十番は、会社の受付だった。


「ここで受け取ります」


 女性が紙袋を受け取る。


《配送完了》


 ぱむ。


 女性は受付台へ戻った。


 電話が鳴る。


「はい、総務です」


 ぱむちゃんは残っていた。


 電話が終わる。


 女性が書類を一枚処理する。


 もう一度、顔を上げた。


「まだ何か?」


 ぱむちゃんは女性を見る。


「この後が気になる?」


 ぱむ。


 女性は少し考え、机の端に紙袋を置いた。


「でも、配送係ですよね」


 ぱむちゃんが止まる。


「届けてもらった後は、私の時間です」


 怒ってはいない。


「困ったら、その時は私から頼みます」


 ぱむちゃんは一歩下がった。


「今は頼んでません」


 ぱむ。


 踵を返した。


 ◇


 百十一番。


 古い雑居ビルの四階。


 一人暮らしの男性が紙袋を受け取った。


「ありがとう」


《配送完了》


 ぱむちゃんは端末を見る。


 さっきより早く向きを変えた。


「待って」


 足が止まる。


 振り返らない。


「悪い。戻ってきてくれる?」


 ぱむちゃんが戻る。


 男性の右腕には厚い固定具。


 左手にも新しい包帯が巻かれていた。


「袋、開けてもらえる?」


 ぱむ!


 紙袋を開く。


 箱を出す。


 蓋を開ける。


「そこまで」


 ぱむちゃんの手が止まった。


 男性は片手でバーガーを持つ。


「助かった」


 ぱむ!


 ◇


 男性が台所へ向く。


 ぱむちゃんも一歩ついていく。


「水は自分でやる」


 止まる。


 ぱむ。


 男性は軽いコップを出した。


 蛇口をひねる。


 少しこぼした。


 ぱむちゃんの身体が前へ傾く。


 男性は布巾を肘で寄せた。


「これくらいは、やらせて」


 ぱむちゃんは戻った。


 男性が自分で拭く。


「手伝ってほしい時は、言うから」


 ぱむ。


「言わなかったら?」


 ぱむちゃんは玄関を見る。


 男性を見る。


 一歩、玄関へ戻る。


「そう。それでいい」


 ◇


 配送口。


 至誠ちゃんが二枚の受領票を見比べる。


「百十番。頼まれていないから帰る!」


 ぱむ。


「百十一番。頼まれたから戻る!」


 ぱむ。


 至誠ちゃんは二枚を重ねようとして、やめた。


「同じ《配送完了》でも、その後は同じにできません!」


 ぱむちゃんが首を傾ける。


「でも『頼まれた時だけ』なら全部決まるでしょうか!」


 ぱむちゃんは動かない。


 至誠ちゃんも答えなかった。


 百十番の女性は、自分で頼むと言った。


 百十一番の男性は、必要なところだけ頼んだ。


 どちらも、ぱむちゃんが決める前に境界を言葉にできた。


 できない人なら。


 言う前に困ったら。


 言われたこと自体が危なかったら。


 受領票には、その答えはなかった。


 ぱむちゃんは二枚を別々に箱へ入れた。


 次の紙袋へ手を出す前に、一度だけ自分の両手を見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。