↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/100

第8話「ここにいます」


 百六番は、小さな診療所の待合室だった。


 受取人は高校生くらいの女の子。


「私です」


 ぱむちゃんが紙袋を渡す。


《配送完了》


 女の子は受け取ったまま、椅子から立たなかった。


 隣には封筒がある。


 病院の名前。


 検査結果。


 開封済みだった。


 ◇


「帰るの?」


 ぱむちゃんが止まる。


「ごめん。変なこと聞いた」


 ぱむ。


 女の子は紙袋を膝に置いた。


「母さん、あと一時間くらい来られないんだ」


 ぱむちゃんは出口を見る。


 女の子を見る。


「一人で待つだけなんだけど」


 ぱむ。


「……いてくれる?」


 ぱむちゃんは隣の椅子へ移った。


 ◇


 十分。


 女の子がポテトを一本食べる。


 ぱむちゃんは座っている。


 二十分。


「何も聞かないんだね」


 ぱむ。


「話せないだけ?」


 ぱむ。


「そっか」


 少し笑った。


 三十分。


 廊下の壁から憂起ちゃんの顔が半分だけ出た。


「まだいます?」


 ぱむ。


 女の子が驚いてポテトを落とす。


「壁から!?」


「お触り禁止で」


「触らないよ!」


 憂起ちゃんは床へ抜け、普通に隣へ出てきた。


「迎え、下まで来ています。階段を上がってます」


 女の子の手が紙袋を強く握った。


 ◇


 足音が近づく。


「ごめん、遅くなった!」


 母親が待合室へ入ってきた。


 女の子は立つ。


 封筒を持つ。


「母さん」


「うん」


「これ、一緒に読んで」


 母親は封筒を受け取った。


 ぱむちゃんが椅子から降りる。


「あ」


 女の子が振り返る。


「ありがとう。いてくれて」


 ぱむ!


 ◇


 帰り道。


「何かしました?」


 憂起ちゃんが聞く。


 ぱむちゃんは首を振る。


「じゃあ、ずっとそこに?」


 ぱむ。


「今の私はここです、みたいなものですね」


 ぱむちゃんは憂起ちゃんを見る。


「違います?」


 ぱむちゃんは少し跳ねた。


 ぱむ!


 端末には、とっくに《配送完了》と出ていた。


 そのあとに必要だったのは、答えでも修理でもなかった。


 帰らないでほしい、と頼まれた時間だけ、そこにいることだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。