第7話「ごめんなさいを運べません」
百五番には、紙袋が二つあった。
一つはバーガー。
もう一つは、細長い箱。
受取人の男性が箱を見る。
「誰から?」
配送票には名前があった。
男の顔から表情が消えた。
「……受け取ります」
ぱむちゃんが箱を渡す。
《配送完了》
男は玄関を閉めなかった。
◇
箱の中には、割れた腕時計と修理代の封筒。
短い紙が一枚。
《ごめんなさい。直せるなら使ってください》
男は紙を二度読んだ。
「これで終わったと思ってるのかな」
廊下で待っていた懺悔ちゃんが鼻を動かす。
「バーガー、冷めるよ」
「今それ?」
「うん。謝る方は、わたしには分からないから」
男は少しだけ笑った。
でも箱は閉じた。
「時計は受け取る。金も、修理に使う」
ぱむ。
「でも、あいつには会わない」
ぱむちゃんは動かない。
◇
五分経った。
男はバーガーを食べ始めた。
ぱむちゃんはまだいる。
「待ってても変わらないよ」
ぱむ。
「許すまで帰らないつもり?」
ぱむちゃんは箱を見る。
男を見る。
箱を見る。
「受け取ったよ」
男が言う。
「それは本当」
箱を指す。
「でも、受け取ったのは時計と金と謝罪の言葉。関係まで受け取ったわけじゃない」
ぱむちゃんの身体が止まる。
懺悔ちゃんはポテトを一本見つめていた。
「食べていい?」
「それ俺の」
「……そっか」
◇
ぱむちゃんは玄関から一歩下がった。
男が箱を抱える。
「持ってきてくれたことには、ありがとう」
ぱむ。
「送り主に何か返す?」
男は首を振る。
「返事はしない。それも届けなくていい」
ぱむちゃんは空の両手を見る。
それから頭を下げた。
ぱむ。
扉が閉まる。
◇
帰り道。
懺悔ちゃんが歩きながら言った。
「箱は届いたね」
ぱむ。
「ごめんなさいも、読まれた」
ぱむ。
「でも、その先は食べ物みたいに運べないんだね」
ぱむちゃんは端末を見る。
《配送完了》
表示は正しかった。
謝罪は届いた。
許しは、荷物ではなかった。




