第2話「食べるまでがお届け?」
百一番は、古い事務所の二階だった。
「はい、私です」
眼鏡の男が紙袋を受け取る。
端末が鳴った。
《配送完了》
「ありがとう」
ぱむ。
男が扉を閉めようとする。
ぱむちゃんは動かない。
「……ん?」
扉が止まった。
◇
「まだ何かある?」
ぱむちゃんは紙袋を見る。
男も見る。
「これ?」
ぱむ。
「受け取ったよ」
ぱむ。
「……食べるところまで?」
ぱむちゃんは動かない。
男は少し考えて、扉を開けた。
「じゃあ、入る?」
◇
机の上で紙袋が開いた。
男がバーガーを取り出す。
ぱむちゃんは机の向こうにいる。
一口。
ぱむちゃんはいる。
二口。
いる。
三口。
「見られてると食べづらいな」
ぱむ。
「いや、怒ってないけど」
男はポテトを一本食べた。
ぱむちゃんはいる。
水を飲む。
いる。
男が端末を見る。
「配送って、いつ終わるの?」
ぱむちゃんも端末を見る。
《配送完了》
ずっと前から終わっている。
◇
二十分後。
配送ステーションで至誠ちゃんが首を傾げた。
《百一番 配送完了》
「完了しています!」
その下に帰着記録がない。
「……ぱむちゃん?」
至誠ちゃんは迎えに出た。
◇
男は最後のポテトを食べていた。
ぱむちゃんはまだいた。
「全部食べたよ」
ぱむ。
そこへ至誠ちゃんが来た。
「ぱむちゃん! お迎えに来ました!」
ぱむ。
至誠ちゃんは空の包みを見る。
男を見る。
ぱむちゃんを見る。
「……何を待っていたんですか?」
「たぶん、俺が食べ終わるのを」
「食べ終わるまで……」
至誠ちゃんは端末を確認する。
《配送完了》
「配送は終わっています!」
言ってから、昨日の百番を思い出したように止まった。
「でも、すぐ帰ればいいとも……まだ決めていません!」
男が笑った。
「次は玄関まででいいよ」
ぱむ。
◇
帰り道。
至誠ちゃんは前を歩いた。
「五分ならいいんでしょうか!」
ぱむ。
「食べ終わるまで?」
ぱむ。
「困ってなくなるまで?」
ぱむ。
至誠ちゃんが振り返る。
「全部、終わる時間が違いますね!」
ぱむちゃんは歩く。
配送完了のあとに残る時間には、まだ名前がなかった。




