第23話「おとどけ」
残り三十秒。
ぱむちゃんは九九番を持っていた。
小暮の手は、もう出ていない。
「急がせてごめん」
小暮は時計を見た。
「決めていいよ」
端末の向こうで篠原も黙っている。
至誠ちゃんは何も言わない。
ぱむちゃんは袋の札を見る。
《共同当番》
次に小暮を見る。
机の《小暮》の札。
変更申請を見る。
《篠原》
《処理 未完了》
最後に、赤熱ソースの表示を見る。
ぱむ。
◇
ぱむちゃんは小暮の前へ一歩進んだ。
深緑の点は出ない。
赤い線も出ない。
配送タグもない。
いつもの丸い姿のまま、紙袋を持ち上げる。
小暮が目を見開いた。
「俺?」
ぱむ。
ぱむちゃんは袋を差し出した。
小暮の両手が受け取る。
端末が鳴った。
《配送完了》
残り十八秒。
◇
「ありがとう」
小暮はすぐには袋を開けなかった。
篠原へ通信をつなぐ。
「受け取った」
「……うん」
「全部は食べない。辛かったらやめる」
「絶対だよ」
「分かった」
ぱむちゃんは帰らない。
小暮が袋を開ける。
一口。
水を飲む。
「平気」
篠原が息を吐く音がした。
でも、変更申請はもう使えない。
九九番は受領された。
篠原が受け取る九九番は、もうない。
◇
至誠ちゃんの画面にも《配送完了》が出ていた。
その下へ、自動で時刻が入る。
《受領 小暮》
至誠ちゃんは正解とも失敗とも書かなかった。
ただ、篠原の欄を消さない。
《変更申請 篠原》
そのまま残す。
◇
小暮は午後の準備へ立った。
「ごちそうさま。残りはあとで食べる」
袋を机の端へ置く。
ぱむちゃんは、その袋を見る。
小暮が研究室の奥へ行くまで見る。
端末を見る。
《配送完了》
ぱむ。
今度は、すぐには帰らなかった。
選んだ方が届いたあと、
選ばなかった方が残っていないことまで見てから、
ぱむちゃんは扉へ向かった。




