↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/100

第20話「渡さないでください」


 九九番は、まだ共同研究室にあった。


 ぱむちゃんが抱えている。


 小暮は時計を見る。


「あと七分」


 机の端には《小暮》の当番札。


 その横に、昨日の日付の変更申請。


《申請者 篠原》

《処理 未完了》


 至誠ちゃんの通信がつながる。


「篠原さんへ確認します!」


 ◇


 篠原は別棟にいた。


「渡さないでください」


 至誠ちゃんのペンが止まる。


「理由をお願いします!」


「小暮さん、午後の検査があるんです」


「昼食禁止ですか!」


「禁止じゃない。でも、その袋は辛いやつですよね」


 注文票。


《赤熱ソース》


「昨日、胃を悪くしたって言ってたから。当番を代わる申請を出しました」


「本人には!」


「言いました。大丈夫だって聞かなくて」


 ◇


 共同研究室。


「大丈夫だよ」


 小暮は同じことを言った。


「朝から何も食ってないし。俺が頼んだ分だろ?」


 ぱむちゃんは小暮を見る。


 袋を見る。


 持ったまま、動かない。


「俺は受け取りたい」


 端末から至誠ちゃんの声。


「篠原さんは、渡さないでほしいと言っています!」


「知ってる。でも俺の昼だよ」


 ぱむちゃんは袋を床へ置かなかった。


 小暮にも渡さなかった。


 ◇


 一分。


 二分。


 小暮の昼休みが減る。


 研究室の奥から呼ぶ声がした。


「小暮さん、午後の準備お願いします」


「あと五分!」


 返事をして、小暮はぱむちゃんを見る。


「食べる時間なくなるな」


 ぱむちゃんの腕が少し下がった。


 渡さない。


 それで、何も起きないわけではなかった。


 ◇


 至誠ちゃんの画面に記録が増える。


《小暮 受取希望》

《篠原 非受取希望》

《理由 体調懸念》

《経過 昼休み残五分》


 至誠ちゃんは九九番を見た。


「止めれば、安全とは限りません!」


 ぱむちゃんが端末を見る。


「渡せば、篠原さんの心配を無視します!」


「渡さなければ、小暮さんの昼がなくなります!」


 ぱむちゃんは袋を抱え直した。


 ◇


 小暮が椅子へ座った。


「どうする?」


 ぱむちゃんは答えない。


 至誠ちゃんも、すぐには指ささなかった。


 時計だけが進む。


 残り四分。


 九九番は、まだ誰の手にも渡っていない。


 けれど、止まったままでも、もう結果は増え始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。