第17話「あのとき届けなければ」
六二番の受領票は、古い記録箱にあった。
《受領済/十二時八分》
ぱむちゃんはそれを抜いた。
昨日、隣に置いた高瀬の紙も持ってくる。
《十二時五十分頃/当日修理不可》
至誠ちゃんが配送口から戻った。
「調べますか!」
ぱむちゃんは二枚を床へ置いた。
十二時八分。
十二時五十分。
その間を、小さな指でなぞった。
◇
時計店には、修理受付の人がいた。
「また六二番?」
ぱむ。
至誠ちゃんが聞く。
「もし、十二時八分に届いていなかったらどうなっていましたか!」
「昼飯?」
「はい!」
「食べずに十五分からの修理に入ってたと思う」
「臨時の一件は!」
「受けてない」
即答だった。
「空きができなかったから」
ぱむちゃんは高瀬の紙を見る。
至誠ちゃんが続ける。
「では、高瀬さんは当日修理できましたか!」
「たぶん、それも無理」
至誠ちゃんが止まった。
「どうしてですか!」
「俺が昼抜きで詰まってるから」
修理受付の人は作業台を指した。
「高瀬さんが来た五十分頃、まだ前の修理やってたはず」
◇
店へ戻る。
至誠ちゃんは紙を四枚に増やした。
《六二番が届く》
《受付が食事を取る》
《修理が一件早く終わる》
《臨時枠が埋まる》
その下に、高瀬。
「六二番を届けたから、高瀬さんの選択肢が減りました」
ぱむちゃんが六二番を見る。
「でも」
至誠ちゃんは別の紙を置く。
《六二番が届かない》
《受付が昼食を取れない》
《予定どおり修理継続》
《臨時枠は生まれない》
「届けなくても、高瀬さんが助かるとは限りません!」
ぱむちゃんは二列の紙の間に座った。
片方には、助かった修理客が一人いる。
もう片方には、その人がいない。
◇
至誠ちゃんは六二番の受領票を持ち上げた。
「これは成功記録です!」
ぱむちゃんを見る。
「今もです!」
ぱむ。
「受取人は助かりました! 臨時の一件も助かりました!」
ぱむちゃんは受領票へ手を伸ばす。
今度は触れた。
裏返す。
白い裏面。
至誠ちゃんがペンを置く。
「でも、この成功から続いたことがあります」
ぱむちゃんはペンを見る。
至誠ちゃんは書かない。
ぱむちゃんが受領票を表へ戻した。
《受領済/十二時八分》
時刻は変わらない。
◇
その日の午後。
ぱむちゃんは新しい配送を一件終えた。
受領音。
《完了》
以前なら、その表示を見て配送口へ戻っていた。
今日は、受取人が袋を持って歩き出すまで見た。
角を曲がる。
見えなくなる。
ぱむちゃんは、そこでもう一度《完了》を見る。
ぱむ。
帰る。
六二番の受領票は、成功記録の箱へ戻した。
ただし、隣には高瀬の紙も入った。
成功したことと、
その先があることは、
同じ箱に残った。




