第12話「正しく直しました」
九六番は、《確認中》のトレーに残っていた。
朝。
秩序ちゃんが、その前に椅子を置く。
「同じ条件でもう一度やるんですか!」
「いいえ」
机には昨日の配送票、佐伯の受領記録、新しい紙袋。
秩序ちゃんは定規を置いた。
「測れるところを、先に切ります」
ぱむちゃんが机の端から覗く。
◇
九七番。
《西六番街六番地・共同制作棟第三室》
《受取人 佐伯》
《十二時二十分》
《商品 照り焼きバーガーセット》
住所は登記表記。
佐伯本人へ音声確認。
三つの時計を同期。
調理票と封印番号を照合。
秩序ちゃんが四つの欄へ丸を付ける。
「ここまでは適合」
「全部です!」
「測ったものは」
ぱむちゃんへ紙袋を渡す。
ぱむ。
◇
十二時二十分。
第三制作室。
佐伯は机の端を空けて待っていた。
「今日は検査付き?」
ぱむちゃんが紙袋を差し出す。
秩序ちゃんが入口から時計を見る。
「時刻、適合」
佐伯が受け取る。
「照り焼き。俺の」
封印番号。
「適合」
佐伯が受領欄へ指を置いた。
《受領済み》
一拍。
《誤配送です》
佐伯の手が止まる。
ぱむちゃんも止まった。
廊下から台車の車輪が鳴った。
「佐伯さん、版下」
作業着の女が、大きな紙筒を抱えて立っている。
「あ、そこ置いといて」
「前の棚でいい?」
「今はこっち。共同当番やめてから分けた」
女は入口脇の棚へ紙筒を差した。
《第二製版室》
古いラベルの上から、新しいラベルが貼られている。
佐伯がバーガーの袋を机へ置く。
「昼便も、前はあっちと一緒だったんだけどな」
女は端末の《誤配送です》を見た。
「まだ昔のままなんじゃない?」
「端末は正常です」
秩序ちゃんが答える。
「正常で、それ?」
「はい」
女は棚の古いラベルを見る。
「これも紛らわしいか」
端を爪で起こす。
古い《共同当番》の文字が、粘着音を立てて剥がれた。
新しい《第二製版室》だけを貼り直す。
「もう一緒に受けないし」
丸めた古いラベルを作業着のポケットへ入れ、台車を引いて行った。
◇
秩序ちゃんは最初から確認した。
住所。
受取人。
時刻。
商品。
受領。
全部に丸。
端末自己診断も正常。
「じゃあ、何が間違ってるの?」
佐伯が聞く。
秩序ちゃんは配送票を裏返す。
何もない。
表へ戻す。
「分かりません」
ぱむちゃんが顔を上げる。
秩序ちゃんは《誤配送です》を消さなかった。
その横へ、別の一行を書く。
《第二製版室/旧共同当番》
「これは原因ですか!」
「まだ違います」
至誠ちゃんが口を閉じる。
「今日、ここで起きたことです」
◇
配送ステーション。
《確認中》のトレーに、九七番が増えた。
《住所 適合》
《受取人 適合》
《時刻 適合》
《商品 適合》
《受領 適合》
《端末 正常》
その下。
《第二製版室/旧共同当番》
ぱむちゃんは最後の一行を指で押さえた。
ぱむ。
翌日の九八番の配送票が、隣のトレーへ置かれた。
宛先は、また第三制作室だった。




