第15話「おしごと、みつけた」
翌朝。
開店前のPANDEMONIUM BURGERには、仕事が三十一人分あった。
作業表の一番下には、もう一つ名前がある。
《ぱむちゃん 担当未定》
秩序ちゃんは、これまでの札を机へ並べた。
仕入れ。
受入。
厨房。
フロア。
広報。
「昨日の単独外部配送は成功です。ただし、一件の成功と正式配置は分けます」
返事がない。
秩序ちゃんが顔を上げる。
ぱむちゃんはいなかった。
◇
厨房で、朝最初のバーガーが包まれた。
紙袋へ入る。
封が貼られる。
《七一番/西側/至誠指定》
配送ステーションへ送られる。
その横に、ぱむちゃんがいた。
誰にも呼ばれていない。
袋から少し離れた床に座っている。
至誠ちゃんが来た。
「七一番、受領します!」
袋を取る。
そこで、ぱむちゃんに気づいた。
「今日はここへ来るよう言われましたか!」
ぱむちゃんは首を横に振る。
「では、何を待っていますか!」
ぱむちゃんは答えない。
配送口の空いた場所へ移る。
そこへ、二つ目の紙袋が来た。
《七二番/花店裏口》
ぱむちゃんが立つ。
まだ触れない。
至誠ちゃんは七一番を抱えたまま、七二番の配送票を確認した。
「近距離。通常便。受取人指定あり!」
ぱむちゃんが一度跳ねる。
至誠ちゃんは、昨日より短く言った。
「七二番、お願いします!」
ぱむ!
ぱむちゃんは紙袋を持った。
◇
配送ステーションから客席へ出るスタッフ扉。
第1話では、取っ手に手が届かなかった。
七二番を持ったぱむちゃんは、その前で止まる。
扉の向こうから、トレーを持ったクルーが来た。
内側から開く。
「通る?」
ぱむ!
ぱむちゃんは扉の下へ足を入れた。
トレーが先に通る。
扉が戻る前に、身体を横へ滑らせる。
七二番は扉へ触れない。
今度は、そこで引き返さなかった。
客席を抜ける。
ガラス扉の外に朝の通り。
角の向こうに、花店の緑色が少しだけ見える。
ぱむちゃんは店を振り返らない。
外へ出た。
◇
秩序ちゃんが配送ステーションへ来た。
机には、ぱむちゃんのために並べた札が残っている。
「配置決定前に、本人がここへ移動しています」
「はい!」
至誠ちゃんは七一番を抱えたままだ。
「昨日の続きを待っていました!」
「本人の説明ではありません」
「行動の記録です!」
秩序ちゃんは反論しなかった。
端末を見る。
《七二番/配送中》
作業表を見る。
《ぱむちゃん 担当未定》
ペンを取る。
「先に名称を与えれば、その名称へ行動を寄せる可能性があります」
至誠ちゃんが黙る。
「だから、昨日は変えませんでした」
机の札。
仕入れ。
受入。
厨房。
フロア。
広報。
どれも、ぱむちゃんが試した仕事だった。
「今日は、名称より先に本人が場所を選びました」
《担当未定》へ一本、線を引く。
《ぱむちゃん 配送》
至誠ちゃんは笑った。
「確定ですね!」
「現時点では」
「はい!」
◇
花店の裏口には、朝の水桶が並んでいた。
切った茎。
濡れた床。
開いた裏扉。
中から声がする。
「七二番?」
ぱむ!
「こっちです」
花店の人が、水桶を一つ脇へ寄せた。
乾いた踏み板が現れる。
ぱむちゃんはそこまで進む。
相手が受取札を出す。
《七二番/花店裏口》
紙袋が相手へ移る。
「ありがとう」
花店の人は袋を店内の乾いた棚へ置いた。
ぱむちゃんは一度跳ねた。
それから帰る。
◇
配送ステーション。
新しい紙袋が一つ待っていた。
至誠ちゃんは、その横に立っていた。
ぱむちゃんが戻る。
受領記録を箱へ入れる。
作業表の前を通る。
昨日までの場所に、もう《担当未定》はなかった。
《ぱむちゃん 配送》
ぱむちゃんは立ち止まらない。
作業表を通り過ぎる。
次の紙袋の前へ行く。
至誠ちゃんが配送票を確認した。
「八一番。近距離です!」
ぱむちゃんは待つ。
「ぱむちゃん。お願いします!」
ぱむ!
紙袋を持つ。
厨房で、次のバーガーが完成した。
開店前のPANDEMONIUM BURGERには、仕事が三十二人分あった。
今度は、その一つを待っているひとがいた。




