↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/100

第15話「おしごと、みつけた」


 翌朝。


 開店前のPANDEMONIUM BURGERには、仕事が三十一人分あった。


 作業表の一番下には、もう一つ名前がある。


《ぱむちゃん 担当未定》


 秩序ちゃんは、これまでの札を机へ並べた。


 仕入れ。

 受入。

 厨房。

 フロア。

 広報。


「昨日の単独外部配送は成功です。ただし、一件の成功と正式配置は分けます」


 返事がない。


 秩序ちゃんが顔を上げる。


 ぱむちゃんはいなかった。


 ◇


 厨房で、朝最初のバーガーが包まれた。


 紙袋へ入る。


 封が貼られる。


《七一番/西側/至誠指定》


 配送ステーションへ送られる。


 その横に、ぱむちゃんがいた。


 誰にも呼ばれていない。


 袋から少し離れた床に座っている。


 至誠ちゃんが来た。


「七一番、受領します!」


 袋を取る。


 そこで、ぱむちゃんに気づいた。


「今日はここへ来るよう言われましたか!」


 ぱむちゃんは首を横に振る。


「では、何を待っていますか!」


 ぱむちゃんは答えない。


 配送口の空いた場所へ移る。


 そこへ、二つ目の紙袋が来た。


《七二番/花店裏口》


 ぱむちゃんが立つ。


 まだ触れない。


 至誠ちゃんは七一番を抱えたまま、七二番の配送票を確認した。


「近距離。通常便。受取人指定あり!」


 ぱむちゃんが一度跳ねる。


 至誠ちゃんは、昨日より短く言った。


「七二番、お願いします!」


 ぱむ!


 ぱむちゃんは紙袋を持った。


 ◇


 配送ステーションから客席へ出るスタッフ扉。


 第1話では、取っ手に手が届かなかった。


 七二番を持ったぱむちゃんは、その前で止まる。


 扉の向こうから、トレーを持ったクルーが来た。


 内側から開く。


「通る?」


 ぱむ!


 ぱむちゃんは扉の下へ足を入れた。


 トレーが先に通る。


 扉が戻る前に、身体を横へ滑らせる。


 七二番は扉へ触れない。


 今度は、そこで引き返さなかった。


 客席を抜ける。


 ガラス扉の外に朝の通り。


 角の向こうに、花店の緑色が少しだけ見える。


 ぱむちゃんは店を振り返らない。


 外へ出た。


 ◇


 秩序ちゃんが配送ステーションへ来た。


 机には、ぱむちゃんのために並べた札が残っている。


「配置決定前に、本人がここへ移動しています」


「はい!」


 至誠ちゃんは七一番を抱えたままだ。


「昨日の続きを待っていました!」


「本人の説明ではありません」


「行動の記録です!」


 秩序ちゃんは反論しなかった。


 端末を見る。


《七二番/配送中》


 作業表を見る。


《ぱむちゃん 担当未定》


 ペンを取る。


「先に名称を与えれば、その名称へ行動を寄せる可能性があります」


 至誠ちゃんが黙る。


「だから、昨日は変えませんでした」


 机の札。


 仕入れ。

 受入。

 厨房。

 フロア。

 広報。


 どれも、ぱむちゃんが試した仕事だった。


「今日は、名称より先に本人が場所を選びました」


 《担当未定》へ一本、線を引く。


《ぱむちゃん 配送》


 至誠ちゃんは笑った。


「確定ですね!」


「現時点では」


「はい!」


 ◇


 花店の裏口には、朝の水桶が並んでいた。


 切った茎。


 濡れた床。


 開いた裏扉。


 中から声がする。


「七二番?」


 ぱむ!


「こっちです」


 花店の人が、水桶を一つ脇へ寄せた。


 乾いた踏み板が現れる。


 ぱむちゃんはそこまで進む。


 相手が受取札を出す。


《七二番/花店裏口》


 紙袋が相手へ移る。


「ありがとう」


 花店の人は袋を店内の乾いた棚へ置いた。


 ぱむちゃんは一度跳ねた。


 それから帰る。


 ◇


 配送ステーション。


 新しい紙袋が一つ待っていた。


 至誠ちゃんは、その横に立っていた。


 ぱむちゃんが戻る。


 受領記録を箱へ入れる。


 作業表の前を通る。


 昨日までの場所に、もう《担当未定》はなかった。


《ぱむちゃん 配送》


 ぱむちゃんは立ち止まらない。


 作業表を通り過ぎる。


 次の紙袋の前へ行く。


 至誠ちゃんが配送票を確認した。


「八一番。近距離です!」


 ぱむちゃんは待つ。


「ぱむちゃん。お願いします!」


 ぱむ!


 紙袋を持つ。


 厨房で、次のバーガーが完成した。


 開店前のPANDEMONIUM BURGERには、仕事が三十二人分あった。


 今度は、その一つを待っているひとがいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。