第13話「配送係のとなり」
白い四角の紙袋が、配送口へ来た。
《五一番/北隣・修理店》
至誠ちゃんは袋を持ち上げる前に、ぱむちゃんを見た。
「今日は私が運びます!」
ぱむちゃんが袋へ近づく。
「隣で見ていてください!」
ぱむ。
至誠ちゃんが白い四角を取る。
ぱむちゃんは、空いたその隣へ入った。
◇
外へ出た瞬間、至誠ちゃんが遠くなった。
一歩。
二歩。
ぱむちゃんが走る。
至誠ちゃんは三歩目を出さずに待った。
「同行者を置いていけば、同行ではありません!」
追いつく。
「この速さで行きます!」
いつもなら、五一番はもう着いている。
今日は、まだ店の前だった。
角から自転車が来た。
至誠ちゃんは止まらない。
紙袋を建物側へ移し、自分が道路側へ出る。
ぱむちゃんも一歩ずれる。
至誠ちゃんと壁の間へ入った。
自転車が通り過ぎる。
「そこです!」
至誠ちゃんは前を向いたまま言った。
「荷物より道路側へ出ません!」
ぱむちゃんは、自分の位置を確かめるように一度跳ねた。
◇
青い庇。
修理店の入口には椅子が三脚並んでいた。
一脚だけ《乾燥中》。入口を半分塞いでいる。
「五一番の配送です!」
「奥です。今、塗料を閉めます」
返事はした。
人は出てこない。
至誠ちゃんは入口へ袋を置かなかった。
椅子も動かさない。
庇の下で立つ。
ぱむちゃんも立つ。
店内で缶の蓋が閉まった。
水道が鳴る。
タオルが擦れる。
それから修理店の人が出てきた。
「お待たせしました」
指先には、まだ薄く塗料が残っている。
至誠ちゃんは袋を差し出さない。
「五一番です! 受取札を確認します!」
相手が胸ポケットから札を出した。
白い四角。
五一番。
「合っています」
「確認しました!」
至誠ちゃんは袋を渡す。
相手が持ち上げる。
そこで終わらなかった。
修理店の人は振り返り、塗料缶の並ぶ作業台へ置こうとした。
「そこ、まだ濡れてますよ」
店の奥から声がした。
手が止まる。
別の乾いた台へ置く。
至誠ちゃんは、その瞬間に端末を押した。
「配送完了です!」
ぱむちゃんは紙袋ではなく、乾いた台を見ていた。
◇
帰り道。
至誠ちゃんは道路側。
ぱむちゃんは建物側。
今度は歩幅が最初から揃っていた。
配送口へ戻る。
至誠ちゃんは受領記録を箱へ入れた。
「帰還しました!」
次の袋が来る。
ぱむちゃんが、その前へ出た。
至誠ちゃんは首を振る。
「次は私だけです! 遠距離便です!」
ぱむちゃんは止まった。
至誠ちゃんが袋を取る。
「待っていてください!」
ぱむ。
扉が開く。
閉じる。
ぱむちゃんは追わなかった。
受領箱の横へ座る。
誰もいない配送口で、新しい袋が一つ完成した。
ぱむちゃんは触れない。
その隣で待つ。
しばらくして、扉が一度だけ揺れた。
「配送完了! 帰還しました!」
至誠ちゃんが戻る。
受領記録を箱へ入れる。
ぱむちゃんは立ち上がった。
至誠ちゃんの手には、もう荷物がない。
次の袋が置かれる。
至誠ちゃんが配送票を取る。
ぱむちゃんは、さっきと同じ場所へ立った。
「……順番、見ていましたね!」
ぱむ。
至誠ちゃんは受領箱を指した。
次に、新しい紙袋を指した。
「届けて終わりではありません!」
ぱむちゃんは箱から袋へ、指の先を追った。
「戻って、次を受けられるところまでです!」
ぱむちゃんは一度、店の扉を振り返った。
それから配送口へ向き直る。
次の紙袋には、まだ触れなかった。
至誠ちゃんが指すまでは。




