第38話 実戦訓練:魔力の刃で“斬る”試験編(1)
筋肉王子が牢屋で肩幅を小さくし、ルフォードとガルディオの忠犬二匹が震えながら反省し、ようやく──魔道庁は静寂を取り戻した。
セリシーヌは深く息を吐いた。
(……やっと訓練に集中できますわね……。影の戦場に立つためには、実戦訓練が必要ですもの)
オルフェン副院長は、黒曜の瞳でセリシーヌを見つめた。
「セリシーヌ嬢……。第三試験を突破した以上──次は実戦だ」
セリシーヌは剣を握りしめた。
「……私、準備はできていますわ」
オルフェンは静かに頷いた。
「では──始めるぞ」
訓練区画の奥には、魔道庁専用の実戦フィールドが広がっていた。
石造りの床に魔力紋章が刻まれ、空気そのものが緊張感を帯びている。
オルフェンは手をかざし、魔力を展開した。
「《《黒曜召喚陣・展開》》──」
魔法陣から、黒い影のような《《魔力体モンスター》》が現れた。
【影狼】
【魔力で構成された実戦用の幻獣】
【斬撃の強さを測るための訓練対象】
セリシーヌは目を細めた。
「……これを斬ればよろしいのですわね?」
「ただ斬るだけではない! 魔力の刃を《《維持したまま》》斬る! それが第四試験だ」
セリシーヌは深呼吸した。
「……ふぅ……」
剣先に光が宿る。
第二試験で作っ《《魔力の刃》》が、第三試験で学んだ《《維持》》によって安定している。
オルフェンは背後からそっと手を添えた。
「焦るな! 魔力の刃は、君の心の形だ! 静かに──通せ」
セリシーヌは頷いた。
(……オルフェンさまの声……落ち着きますわね……。悪役令嬢が影の戦場で戦うなんて、まるで物語の主人公みたいですわ)
影狼が低く唸った。
「グルルル……」
オルフェンが静かに言った。
「行け! セリシーヌ嬢」
セリシーヌは踏み込んだ。




