第37.5話 第一王子アルフレッド、筋肉が減ったので、牢獄明けの再訓練
三日間の牢獄生活を終えたアルフレッドは、朝の王宮庭園でひとり膝を抱えていた。
肩幅は……小さくなった。
胸筋も……しぼんだ。
腹筋も……影が薄い。
鏡を見るたび、心が砕ける。
「セリシーヌ嬢……僕は……また《《哀れな見た目》》に戻ってしまったんだ……」
忠犬二匹こと、ルファードとガルディオは、遠くの柱の陰からひそひそと囁いていた。
「王子……肩幅が……本当に小さくなったね……」
「筋肉の影が……消えてる……」
アルフレッドは涙目で、声がする方へと振り返った。
「君たち……僕はどうすればいいんだ……? 筋肉をつければセリシーヌ嬢に褒められる……でも太ろうとすると怒られる……筋肉を減らすと褒められる……でも減りすぎると哀れと言われる……!」
忠犬二匹は顔を見合わせた。
「王子……方向性が……」
「また迷子になってる……」
アルフレッドは胸を押さえた。
「セリシーヌ嬢は……以前の肩幅が好きだと言った……。つまり……筋肉は必要……でも太るのは禁止……魔法書で筋肉を増やすのも禁止……」
その後アルフレッドは、拳を握った。
「つまり……!」
忠犬二匹は震えた。
「王子……まさか……」
「また変な方向へ……」
アルフレッドは叫んだ。
「僕は……《《自然な筋肉》》を取り戻す!! 魔法書なし! 脂肪なし! ただの純粋な鍛錬で!!」
忠犬二匹は叫んだ。
「普通の方向性だぁあああっ!!」
「王子が正常になった!!」
僕は立ち上がり、空を見上げた。
「セリシーヌ嬢……。あなたのために……。僕は《自然な肩幅》を取り戻します……! あなたの隣で、堂々と立てるように……!」
忠犬二匹は泣きながら拍手した。
「王子……。やっと……。やっとまともな方向性に……!」
「僕たち……嬉しい……!」
しかしその瞬間──
セリシーヌ嬢が、庭園の奥から優雅に現れた。
金糸の髪が朝日に輝き、宝石の瞳がアルフレッドを射抜く。
「殿下……牢獄生活、お疲れさまでしたわ」
アルフレッドは慌てて背筋を伸ばした。
「セリシーヌ嬢……! 僕は……あなたのために……自然な筋肉を取り戻す訓練を始めます!!」
セリシーヌ嬢は、ゆっくりと瞬きをした。
「自然な筋肉……?」
「はい!! あなたが好む肩幅を……魔法なしで……!」
セリシーヌ嬢は、ふっと微笑んだ。
「……殿下。私は、あなたが《《わたくしの隣で堂々と立つ姿》》が好きなのですわ」
「堂々と……!」
「筋肉があっても、なくても……。あなたが《《わたくしのために努力している姿》》が、何より美しいのですわ」
アルフレッドは固まった。
忠犬二匹は震えた。
「王子……方向性が……」
「また揺らいでる……!」
セリシーヌ嬢は続けた。
「ただし殿下。太ろうとする努力は、今後も一切禁止ですわ。魔法書も禁止。筋肉を増やすのは……ほどほどに」
「ほどほど……!?」
「ええ。あなたが《《わたくしの隣で見栄えが良い》》程度で十分ですわ」
アルフレッドは胸を押さえた。
「セリシーヌ嬢……! 僕は……あなたのために……《《ほどほどの筋肉》》を目指します!!」
忠犬二匹は叫んだ。
「ほどほどって何ぃいいいっ!!」
「王子!! また方向性が曖昧!!」
しかしアルフレッドは拳を握った。
「ほどほどの筋肉……! それこそが……僕の新たな目標だ!!」
忠犬二匹は泣きながら叫んだ。
「王子!! ほどほどは難しい!!」
「絶対にまた方向性を間違える!!」
アルフレッドは空を見上げた。
「セリシーヌ嬢……あなたのために……僕は《《ほどほどの筋肉》》を極めます……!」
セリシーヌ嬢は優雅に微笑んだ。
「期待しておりますわ、殿下」
その瞬間──アルフレッドの心に新たな炎が灯った。
◆新たな訓練目標
『セリシーヌ嬢の隣で最も美しく見える《《ほどほどの筋肉》》を極める』
これは……!
これは……!!
アルフレッドの人生で最も難しい修行だ……!!
忠犬二匹は泣きながら叫んだ。
「王子!! 絶対にまた方向性を間違える!!」
「でも……がんばって……!」
アルフレッドは拳を握りしめた。
「僕は……やる!! セリシーヌ嬢のために!!」
こうしてアルフレッドは──牢獄明けの新たな修行へと進むのであった。
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