第30話 魔道庁・地下訓練区画で逮捕?
オルフェンが発動した《《黒曜捕縛陣》》により、痩せ型忠犬二匹はふわりと宙に浮いたまま……まるで迷子の子猫のようにバタバタしていた。
ガルディオは涙目で叫ぶ。
「セリシーヌさまぁああああああっ!! 助けに来たのに捕まったぁあああああああああ!!」
ルファードは必死に手足を動かす。
「補習授業なんて嘘ですよね!? 危険な訓練してるんですよね!? 僕たち、心配で……!!」
セリシーヌは頭を抱えた。
(……本当に来てしまいましたのね……)
オルフェン副院長は、黒曜の瞳を細めたまま忠犬二匹を見つめる。
「……君の忠犬は、魔道庁の封印を突破し、排水路を通り、裏階段まで到達した……これは重大な規律違反だ」
セリシーヌは慌てて言った。
「ち、違いますわ! あの子たちは、ただ……わたくしを心配して……」
オルフェンは静かに忠犬二匹を訓練区画の床へ降ろした。
《ふわり》
ガルディオは膝をつき、セリシーヌに向かって叫ぶ。
「セリシーヌさま!! 危険な訓練をしてるなら、僕たちも守らせてください!!」
ルファードは涙を拭いながら言った。
「補習授業なんて嘘ですよね!? 僕たち、セリシーヌさまの影になりたいんです!!」
セリシーヌはため息をついた。
「……あなたたち、どうして補習授業を信じられませんの?」
忠犬二匹は同時に叫んだ。
「「セリシーヌさまが補習授業なんてするわけない!!」」
オルフェンは横で腕を組み、静かに言った。
「……セリシーヌ嬢……。説明してもらおうか……。なぜ君の周囲には、これほど忠誠心の強い痩せ型が集まる?」
セリシーヌは困ったように頬をかいた。
「……わたくしにも、よくわかりませんわ……。ただ、少し叱ったり、助けたりしただけですのに……」
オルフェンは黒曜の瞳を細めた。
「君は……人を惹きつける力がある……。魔力だけではなく、心もだ」
セリシーヌは一瞬、言葉を失った。
(……心を惹きつける? そんなこと、言われたの初めてですわ……)
忠犬二匹は、オルフェンの言葉に反応した。
ガルディオは叫ぶ。
「そうです!! セリシーヌさまは……僕たちの心を救ってくれたんです!!」
ルファードも続く。
「叱られて……。救われて……。僕たち、セリシーヌさまの影になりたいんです!!」
オルフェンは静かに二人を見下ろした。
「……影になりたいなら、まずは規律を守れ……。魔道庁への無断侵入は重罪だ」
忠犬二匹は震えた。
「す、すみません……」
「もうしません……」
セリシーヌは慌てて言った。
「オルフェンさま、あの子たちを罰しないでくださいませ……。私のために来ただけですの……」
オルフェンはセリシーヌを見つめた。
黒曜の瞳が、少しだけ柔らかくなる。
「……君がそう言うなら、今回は不問にしよう……。だが──」
セリシーヌは息を呑む。
オルフェンは忠犬二匹に向かって言った。
「二度と魔道庁に近づくな! 次は捕縛では済まない!」
忠犬二匹は同時に叫んだ。
「「はい!!」」
オルフェンの《《距離の近い》》指導……
オルフェンはセリシーヌの方へ歩み寄り、忠犬たちには聞こえないように小声で言った。
「……君は、心配されすぎだ……。影の戦場に立つなら──周囲を巻き込まぬ強さが必要だ……」
セリシーヌは少しだけ目を伏せた。
「……わたくし、強くなりますわ……。誰も巻き込まないように……」
オルフェンは、そっとセリシーヌの手に触れた。
「その意志があれば十分だ……。君は必ず強くなる……。私が導く……」
セリシーヌの心臓が跳ねた。
(……導く……? オルフェンさまが……わたくしを……?)
忠犬二匹はその様子を見て、震えた。
ガルディオは涙目で叫ぶ。
「セリシーヌさまが……誰かに導かれてる……!!」
ルファードは魔法で、地面を掘り始めた。
「ずるい!! 僕も導かれたい!!」
セリシーヌは叫んだ。
「導かれなくていいですわ!!」
オルフェンは静かに忠犬二匹を見た。
「君たちは帰れ……。セリシーヌ嬢は訓練を続ける」
忠犬二匹は涙目で帰っていった。
◇◇◇




