第25話 オルフェンとの魔力制御訓練、始まりますわ(2)
セリシーヌは胸を張った。
「わたくし、《《悪役令嬢》》ですもの。王宮の影くらい、優雅に守ってみせますわ」
オルフェンは、13歳の少女の冗談めいた戯言を聞き、わずかに口元を緩めた。
「……君は本当に、悪役令嬢になりたいのか?」
「もちろんですわ」
「そうか」
「はい、ですわ」
「まあ、がんばりなさい」
オルフェンは、『この娘は、会話をしていても面白い娘だな』と、《《この日》》から、セリシーヌ嬢への好感度が、日本の恋愛ゲームのようにピロリン! と心臓が鳴り、上がるのだった。
◇◇◇
オルフェンの指示の下──セリシーヌ嬢の訓練が開始される!
《《魔力の流量を半分に》》
オルフェンはセリシーヌの背後に立ち、彼女の剣を持つ手にそっと触れた。
(……近いですわね?)
セリシーヌが思っても、黒曜の瞳が剣を見つめている。
「魔力を半分に絞れ! 君の魔力は多すぎる! まずは《《細く流す》》感覚を覚えろ」
セリシーヌは深呼吸した。
「……ふぅ……」
魔力が剣に流れ──剣先が淡く光る。
オルフェンは首を振った。
「まだ多い! 君は普段、魔力を《《押し流して》》いる。
それでは暴走する」
「押し流すのが悪いのですか?」
「悪い! 魔力は押すものではなく──《《通す》》ものだ」
セリシーヌは、彼女の師となるオルフェンの言葉を聞き、目を丸くした。
(……押すのではなく、通す……? 私、今までずっと押していましたわね……。もしかして、それが理由で、剣が俺ていたのかしら?)
オルフェンはセリシーヌの手を包み込むようにして、魔力の流れを調整した。
「ほら! こうだ……。魔力を細く、静かに……通す……」
セリシーヌの剣先が、柔らかく光った。
「……あら。軽いですわ」
「それが本来の魔力の流れだ……。君は魔力が多すぎて、押し流す癖がついていた」
セリシーヌは感動した。
(……私の魔力、こんなに扱いやすかったのね……)
オルフェンは静かに告げる。
「君は才能がある! だが、才能は制御できなければ意味がない! これから毎日、ここで訓練する」
セリシーヌは頷いた。
「私、頑張りますわ」
セリシーヌ嬢が師の言葉を素直に聞き入れている頃──地上の忠犬たち……
そう庭園では、痩せ型忠犬二匹が泣きながら探していた。
「セリシーヌさまが補習授業って……絶対嘘だ……」
「補習授業で一日帰ってこないなんておかしい……」
筋肉王子も涙目で叫んだ。
「セリシーヌ嬢がいないと……僕の筋肉の意味が……!!」
三人は同時に叫んだ。
「「「絶対に探し出す!!」」」
──魔道庁潜入騒動の幕が、静かに上がろうとしていた。
◇◇◇




