第24話 オルフェンとの魔力制御訓練、始まりますわ(1)
王宮の地下深く──貴族でも王族でも滅多に足を踏み入れられない、《《魔道庁訓練区画》》と呼ばれる巨大な空間が広がっていた。
石造りの壁には魔力封印の紋章が刻まれ、空気そのものが魔力を帯びて震えている。
セリシーヌは、ふくよかな体躯を揺らしながら階段を降りた。
(……地下に来るのは初めてですわね……。悪役令嬢が影の戦場に向かうなんて、まるで物語の主人公みたいですわ……。まさに私の理想世界……)
セリシーヌが、目を輝かせながら、こんなことを考えているなんて知らない、オルフェン副院長は、少女の横を静かに歩いていた。
黒曜の瞳が、薄暗い空間の中でも鋭く光る。
「ここが魔道庁の訓練区画だ……。魔力の暴走を防ぐための封印が施されている……。君の魔力でも、ここなら安全に扱える」
セリシーヌは周囲を見渡した。
「……広いですわね。王宮の地下に、こんな場所があったなんて」
「王宮の影は、表より広いものだ」
オルフェンの言葉は淡々としているのに、どこか重みがあった。
訓練区画・第一試験が始まる。
セリシーヌの師は、《《魔力の流し方を視る》》……
オルフェンはセリシーヌの前に立ち、黒曜の瞳を細めた。
「まずは、君の魔力の流れを《《視る》》! 剣を構えてみろ!」
セリシーヌは剣を抜き、優雅に構えた。
ふくよかな腕がしなやかに動き、剣先が光を帯びる。
オルフェンの瞳が、わずかに揺れた。
「……やはり、異常だ」
「異常とは失礼ですわね」
「褒めている……。君の魔力は、十三歳の量ではない。成人した魔導騎士の三倍はある……」
セリシーヌは目を丸くした。
(……三倍? 私、そんなに肥大化しているの? ふくよか体質のせいかしら……。まあ、そのように、この世界を《《設定》》したのだから、そうなるかしら……?)
オルフェンは続けた。
「だが──流し方が荒い! 魔力が剣に入りすぎている! このままでは、剣が折れるか、君の体が壊れる」
「……壊れるのは困りますわね」
(まあ、絶対に、壊れませんけど。ふっ、ふふふ)
「だから訓練する! 君の魔力は《《肥大化》》しているが、質は極めて良い。正しく扱えば──王宮の戦力になる」




