第22話 セリシーヌ十三歳、【魔道庁】極秘仮入隊ですわ編(1)
王宮上層部会議室──
重厚な空気の中、セリシーヌの魔力の質を見抜いたオルフェン副院長は、静かに口を開いた。
「……魔導院に入るべきだ、と言ったが──訂正しよう」
会議室がざわつく。
「訂正……?」
伯爵が眉をひそめる。
オルフェンはセリシーヌを真っ直ぐ見つめた。
「君の魔力は、魔導院で学ぶには強すぎる……十三歳でこの魔力量は、王宮の《《通常戦力》》では扱えない」
魔導院長も頷いた。
「……確かに。魔導院では、彼女の魔力を制御しきれぬ可能性がある」
騎士団長が腕を組む。
「では……どうするつもりだ?」
オルフェンは、静かに告げた。
「セリシーヌ嬢──君を《《魔道庁》》に仮入隊させたい」
会議室が凍りついた。
だって魔道庁とは?
王宮の裏側で動く、極秘戦力!
対モンスター戦! 他国との魔導戦争! 王族暗殺未遂の鎮圧──!
国の表に出ない《《影の戦力》》を担う組織……
その存在は、貴族の中でも一握りしか知らない。
伯爵は絶句した。
「ま、魔道庁だと……!? あそこは……王宮の影の戦場ではないか!」
オルフェンは頷く。
「だからこそ、彼女の魔力が必要だ! 十三歳で魔力が肥大化し、魔法剣を扱える者など──魔道庁でも滅多にいない」
セリシーヌは静かに息を吸った。
(……魔導院ではなく、魔道庁……。悪役令嬢としては、むしろ《《裏の戦場》》のほうが似合っている気がしますわね)
オルフェンは続けた。
「もちろん、正式入隊ではない! 君はまだ十三歳だ! だが──《《仮入隊》》として訓練を受け、必要な時だけ出動する! 王宮の誰にも知られてはならない。君の友人たちにも、王子にも、知人の貴族にも──誰にもだ!」
セリシーヌは目を丸くした。
(……痩せ型忠犬たちに知られたら、絶対ついてくるわね……。王子は筋肉を増やして参戦しようとするでしょうし……)
伯爵は震えた声で言った。
「セリシーヌ……どうする?」
セリシーヌは剣を握りしめた。
「……わたくし、魔道庁に仮入隊いたしますわ」
会議室がざわついた。
オルフェンは静かに微笑む。
「君の決断に、王宮は救われるだろう」
【極秘任務契約書】
オルフェンは黒い封筒を取り出した。
「これは《《魔道庁極秘契約書》》だ! 君が仮入隊するなら──王宮の誰にも話してはならない。違反すれば、魔力封印処置が行われる」
セリシーヌは封筒を受け取り、優雅に頷いた。
「わたくし、秘密は得意ですわ……。悪役令嬢は、裏で動くものですもの!!」
セリシーヌは、とても十三歳には見えない、ふくよかな胸を張り威張って告げる。




