第20話 セリシーヌ十三歳、魔法剣バレましたわ編!(1)
「セリシーヌ・フォン・ブラント嬢。並びに、フォン・ブラント伯爵。 上層会議室までお越しください」
宮廷の侍従の声は、いつもより硬い。
セリシーヌは思わず肩をすくめた。
(……ついに来たわね。魔法剣バレイベント……。十三歳で発動するなんて、予定より早いわ)
そう、この世界は、セリシーヌ・フォン・ブラントの生前──《《三宅 聖子》》が考えた、彼女の理想の世界……。
その世界に少しばかり歪みが生じた。
だからセリシーヌ嬢は、脳内で困惑する。
そして彼女の、《《この理想の世界》》の父である、フォン・ブラント伯爵は、隣で眉をひそめていた。
「セリシーヌ。何か……心当たりはあるか?」
「……庭園で、少し……光が出ましたわ」
「少し、とは?」
「……剣先から、魔力が弾けて、訓練生の目を焼きましたわ」
「焼いたのか!?」
「軽くですわ。軽く」
伯爵はセリシーヌ嬢の説明を聞き、額を押さえた。
「……君は本当に、悪役令嬢のようなイベントを自力で増やすのが得意だな……」
「私のせいではありませんわ。お父さま……。痩せ型忠犬たちが勝手に見てくるのですもの」
「忠犬……?」
伯爵は理解を放棄したようだ。
◇◇◇
【王宮上層部会議室】
重厚な扉が開くと──そこには、王宮魔導院長、騎士団長、宰相、そして王族の影まで揃っていた。
(……うわぁ。フルメンバー……)
セリシーヌは優雅に一礼した。
「セリシーヌ・フォン・ブラント、参りましたわ」
父の伯爵も続く。
「フォン・ブラント伯爵、参上いたしました」
魔導院長が口を開いた。
「セリシーヌ嬢……。貴女はつい最近──王宮庭園にて……魔力を帯びた剣技を披露したとの報告が上がっている……。十三歳で魔法剣を扱える者など、王宮でも数名しかおらぬ」
騎士団長が腕を組む。
「しかも、魔力の質が……異常に安定していた……。あれは訓練生が扱えるレベルではない! 君は……誰に習った?」
セリシーヌは微笑んだ。
「独学ですわ」
会議室がざわついた。
「独学で魔法剣……?」
「十三歳で……?」
「フォン・ブラント家は武門ではないはず……」
伯爵は慌てて口を開いた。
「ま、魔導院長殿! 娘は……その……少しばかり努力家でして……!」
「少しばかりではないだろう!」
宰相が机を叩いた。
「庭園の訓練生が目を焼かれたと聞いたぞ!」
「軽くですわ。軽く」
「軽く焼くな!!」
セリシーヌはため息をついた。
(……もう、こういう展開になるのはわかっていましたわ)
そのとき──扉が開き、ひとりの男が入ってきた。
そう、王宮魔導院・副院長 《《黒曜の魔眼》》を持つ男……
【黒髪】
【黒曜石のような瞳】
【長身】
【魔力の気配が濃い】
魔導院副院長── 《《オルフェン・ディア・ラグナス》》……
王宮魔導院の天才であり、魔力の流れを《《視る》》ことができる《《黒曜の魔眼》》の持ち主……
彼はセリシーヌを見るなり、瞳を細めた。
「……この子だな……。つい最近話題にあがっている少女……。庭園で魔力を弾けさせたといわれている少女は……」
セリシーヌは背筋を伸ばした。
「……はい。私ですわ」
オルフェンはゆっくりと歩み寄り── セリシーヌの剣を見つめた。
「……魔力の流し方が……十三歳のものではない……。まるで熟練の魔導騎士のようだ……。これは独学かね?」
「ええ、独学ですわ」
「独学でここまでできるなら……君は、魔導院に入るべきだ!」
会議室がざわつく。
「魔導院入り……?」
「十三歳でスカウト……?」
伯爵は慌てた。
「ま、待ってくれ! 娘はまだ十三歳だぞ! せめて十六歳になってからでも遅くないはずだ!」




