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ぽっちゃり令嬢は美男子を逆指名する〜前世でデブと罵られた私、美の基準がバグった異世界で無自覚に男たちを狂わせる悪役令嬢になりました〜  作者: かず斉入道
第1章 悪役令嬢に転生出来ましたわ!

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第17話 王子、禁断の“太る手段”に手を出す──そして筋肉質になり、三人揃って唖然!

 セリシーヌが悪役令嬢ムーブを発動し、庭園を去った翌日──


 王宮は、また妙なざわめきに包まれていた。


「王子が……禁断の手段に手を出したらしい……」

「太るために……あれを使ったって……」

「え、あれって……まさか……?」


 侍女たちのひそひそ声は、瞬く間に広がり──痩せ型忠犬同盟(?)の二人の耳にも届いた。


「ガルディオ……聞いたか?」

「……ああ。王子が《《禁断の手段》》に手を出したらしい」


「禁断って……何だ? ラードの直飲みか?」

「違う。もっと危険だ」


 ガルディオは真剣な顔でつぶやいた。


「王子は……《《筋肉増強魔導書》》を使ったらしい」


「なっ……!! あれは……!!」


 ルファードは震えた。


「痩せ型が使うと……筋肉が暴走して……太るどころか……筋肉質になるという……禁断の魔導書……!!」


「そうだ。太れない者が使うと……体質が《《筋肉寄り》》に変わるらしい」


「それって……太る方向性が違うじゃないか!!」


「違う。だが王子は本気だったんだ……」


 二人は顔を見合わせた。


「……セリシーヌさまが……褒めるかもしれない……?」


「筋肉質の男を……?」


「いや、セリシーヌさまはふくよか美が好きだ。筋肉は……どうだろう……?」


 二人は昨日、セリシーヌ嬢がアルフレッド王子に求めたことをすっかりと忘れているようだが、それでも不安に勝てずに震えた。



 ◇◇◇



 そのころ──セリシーヌは、王宮の廊下を歩いていた。


(……今日こそ静かに過ごしたいわ)


 そう思っていたのに──その願いは、当然のように叶わない。


 なぜなら。


「セリシーヌ嬢ぉおおおおおおおおおっ!!」


 またしても絶叫が響いた。


 セリシーヌは顔をしかめた。


「……また来たのね……」


 振り返ると──


 そこには、昨日まで痩せ型だったはずの王子がいた。


 しかし今の王子は──


【金髪碧眼】

【痩せ型ではない】

【筋肉がついている】

【肩幅が広がっている】

【胸板が厚い】

【腕が太い】


 まるで別人だった。


「セリシーヌ嬢!! 見てください!! 僕……太れなかったので……筋肉をつけました!! 禁断の魔導書を使って……!!」


 セリシーヌは固まった。


「……は?」


 王子は胸を張った。


「あなたに褒められたくて!! あなたのために!! あなたの言葉を胸に刻んで!! 僕は……筋肉質になりました!!」


 セリシーヌは頭を抱えた。


(……いや、筋肉質になるのはいいけれど……肩幅が、以前より小さくなって、バランスが悪い……)


 セリシーヌ嬢がアルフレッド王子へと不満を募らせると、そこへ──痩せ型忠犬同盟が走ってきた。


「セリシーヌさまぁあああああああああっ!!」


「セリシーヌさまっ……!!」


 そして三人は、同時に固まった。


 ガルディオは震えた。


「……王子……筋肉質になってる……」


 ルファードは叫んだ。


「方向性が違う!! 太るってそういうことじゃない!!」


 王子は胸を張った。


「どうですか!? セリシーヌ嬢!! 僕の筋肉!! あなたのために鍛えたんです!!」


 セリシーヌは深いため息をついた。


「……あなたね……。筋肉質になれとは、(わたくし)も申しましたが、誰が《《魔法書》》を使用しろといいましたか? 昨日よりも筋肉のバランスが悪くなり、容姿が醜い……。(わたくし)は、《《今の筋肉容姿》》を維持するようにと申しませんでしたか? 今のアルフレッドさまの筋肉にだと、(わたくし)の理想の世界の、悪役令嬢の恋愛イベントとしては……方向性が違うのよ……おわかり?」


 王子はセリシーヌ嬢の呆れた言葉を聞き、涙目になった。


「ち、違うんですか……?」


「違うわよ!! (わたくし)は、以前のあなたの肉体美を好ましく思ったの……。でも今のあなたの容姿は違うの……」


 セリシーヌ嬢は落胆しながら首を振る。


 だから王子は膝をついた。


「セリシーヌ嬢ぅううううううっ!! 僕の努力は……無駄だったんですかぁああああああっ!!」


 セリシーヌはため息をついた。


「……まあ、でも」


 王子は顔を上げた。


「でも……?」


「昨日よりは……あなたの努力は買うは……。だから以前のような、“頼りがい”があるように見えるアルフレッドさまに戻って欲しいわね……」


 王子は固まった。


 ガルディオも固まった。


 ルファードも固まった。


 三人は同時に叫んだ。


「「「セリシーヌさまぁああああああっ!!!」」


 王子は涙を流した。


「褒められたぁあああああああああっ!! 僕、褒められたぁあああああああああっ!!」


 ガルディオは震えた。


「……セリシーヌさま……王子を褒めた……」


 ルファードは魔法で地面を泥沼化して、手で掘りながら叫んだ。


「ずるい!! 僕も罵倒されたい!!」


「罵倒はあなた専用よ!!」


 セリシーヌのツッコミが響いた。



 ◇◇◇



 こうして、王子は筋肉質になり、セリシーヌに褒められ、痩せ型忠犬二匹は唖然とし、庭園はまた新たなカオスへ突入した。


 セリシーヌは深いため息をついた。


(……どうして(わたくし)の周り、痩せ型忠犬と筋肉王子ばかり増えるのよ……)



 ◇◇◇



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