第15話 痩せ型忠犬同盟、緊急招集! 【王子の恋愛イベント阻止会議】開幕!
庭園の騒ぎがひと段落したころ。
セリシーヌは、ふくよかな影を揺らしながら、そそくさと帰ろうとしていた。
(……今日も疲れたわ。痩せ型忠犬二匹と太れない王子の相手なんて、誰がしたいのよ……)
しかし──その背後で、ひそひそ声が聞こえた。
「……ガルディオ、始めるぞ」
「……ああ、ルファード! セリシーヌさまのために」
セリシーヌは振り返った。
そこには──痩せ型忠犬二匹が、妙に真剣な顔で向かい合っていた。
「……何してるの?」
セリシーヌが問いかけると、ルファードが胸を張った。
「僕たち、緊急会議を開きます!!」
「セリシーヌさまのための……重大な会議です!!」
セリシーヌは嫌な予感しかしなかった。
「……何の会議よ」
二人は声を揃えた。
「王子の恋愛イベント阻止会議です!!」
庭園が静まり返った。
「……は?」
セリシーヌの声が、風に溶けた。
◇◇◇
痩せ型忠犬同盟(?)は、茂みの陰に円陣を組んでいた。
ガルディオは真剣な顔で巻物を広げる。
「まず……王子は危険です」
「危険だな!! 恋愛イベントを起こす気満々だった!!」
「セリシーヌさまの前で走り回る王子は……迷惑です」
「迷惑だな!! 僕の罵倒を邪魔した!!」
「あなたの罵倒はどうでもいいのよ!!」
セリシーヌのツッコミが飛ぶ。
しかし二人は完全に無視して続けた。
「第一条!! 王子をセリシーヌさまに近づけない!!」
「第二条!! 王子が太る努力を見せようとしたら阻止する!!」
「第三条!! 王子が恋愛イベントを起こそうとしたら全力で妨害する!!」
「第四条!! セリシーヌさまの影を守るのは僕!!」
「罵倒を受けるのは僕!!」
「そこは争うな!!」
セリシーヌは頭を抱えた。
(……なんで私のために忠犬同盟が王子を敵視してるのよ……)
しかし二人の決意と意見交換は止まらない。
「ガルディオ、王子の動向はどうだ?」
「……今朝、恋愛度ウルトラMAXを目指すと言っていました」
「ウルトラMAX!? そんな概念はないだろ!!」
「でも王子は本気でした……」
「危険だな!! セリシーヌさまが巻き込まれる!!」
「巻き込まれたくないわよ!!」
セリシーヌの叫びが庭園に響いた。
しかし忠犬同盟は、完全に《《セリシーヌのための戦略会議》》モードに入っていた。
「よし、作戦を立てるぞ!!」
「王子が来たら、僕が魔法で地面を《《泥沼化》》して足止めする!!」
「僕は王子の前に立って、セリシーヌさまの影を守る!!」
「あなたたち、王子は一応は、私の婚約者だから敵扱いしないで!!」
セリシーヌの声は虚しく響く。
忠犬二匹は、完全にやる気だった。
「セリシーヌさまのために!!」
「セリシーヌさまの平穏のために!!」
「私の平穏を勝手に守らないで!!」
セリシーヌは叫んだ。
しかし──忠犬同盟は、セリシーヌの叫びすら聞こえていない。
「よし、決まったな!!」
「王子の恋愛イベントは、僕たちが阻止する!!」
「セリシーヌさまのために!!」
「セリシーヌさまのために!!」
セリシーヌは、深いため息をついた。
(……どうして私の周り、痩せ型忠犬のイベントばかり増えるのよ……)
そのとき──庭園の向こうから、また絶叫が響いた。
「セリシーヌ嬢ぉおおおおおおっ!! 僕の恋愛イベントを見てくださぁああああああい!!」
王子が走ってきた。
忠犬同盟は即座に構えた。
「来たな!!」
「作戦開始だ!!」
「やめてぇえええええええええっ!!」
セリシーヌの悲鳴が庭園に響いた。
だから瘦せ型忠犬三人は、十三歳の少女の天才的な魔法──無詠唱による、地面の泥沼化で、足を取られ、身動きができなくなり、今度は乱闘のカオスができなくなり、陽が沈むまで、王宮の庭園でシクシクと、三人仲良く佇んでいたらしい。
◇◇◇




