第14話 アルフレッド王子、恋愛度MAXの報せに震える! そして彼も暴走する!
翌朝の王宮は、妙な熱気に包まれていた。
侍女たちがひそひそと囁き合い、騎士たちがざわつき、文官たちまで落ち着かない。
「聞いた? ガルディオさま、恋愛度がMAXらしいわよ……」
「セリシーヌ嬢に本気みたい……」
「痩せ型忠犬同盟の片方が、ついに……!」
その噂は、当然のように──最も聞いてはいけない人物の耳へ届いた。
そう、アルフレッド王子である。
◇◇◇
「……な、な、な……なにぃいいいいいいっ!?」
王子の絶叫が、王宮の廊下に響き渡った。
側近が慌てて駆け寄る。
「王子!? どうされました!? またスープをこぼされましたか!?」
「違う!! もっと重大だ!!」
王子は震える手で、侍女から聞いた噂を指さした。
「ガルディオの恋愛度が……MAXになったらしい……!!」
側近は固まった!
「……MAX、ですか」
「そうだ!! MAXだ!! 恋愛度が!! MAXだ!!」
王子は頭を抱え、床に崩れ落ちた。
「どうしてだ……!? どうして痩せ型の男ばかり……。セリシーヌ嬢に懐くんだ……!? 僕は……太りたいのに太れないし……剣も魔法もできないし……!!」
側近は、そっと王子の肩に手を置いた。
「……王子、まずはスープを飲みましょう」
「スープじゃ嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
王子は床を叩いた。
「僕だって……! 僕だって……セリシーヌ嬢に褒められたいんだ……!! なのに……ガルディオは恋愛度MAXで……ルファードは罵倒で喜んで……!! 彼女の婚約者である、僕だけ何もないじゃないかぁあああっ!!」
側近は泣きそうな顔で王子を見つめた。
「……王子、落ち着いてください。恋愛度MAXは……その……乙女ゲーム的な概念でして……」
「僕にも恋愛度をくれぇえええええええええっ!!」
王子は立ち上がった。
そして、拳を握りしめた。
「決めた!」
側近は嫌な予感を覚えた。
「……王子、何を?」
「僕も恋愛物語のような……セリシーヌ嬢との恋愛イベントを起こす!」
「やめてください!!」
「やる!! 絶対にやる!! ガルディオが恋愛度MAXなら……僕はその上を行く!! 恋愛度……ウルトラMAXだ!!」
「そんな概念はありません!!」
王子は胸を張った。
「まずは……セリシーヌ嬢の前で、僕の努力を見せる!! 剣も魔法もできないなら……太る!! 太れないなら……太る努力を見せる!! 太る努力が見せられないなら……太る意思を見せる!!」
「意思だけでは太れません!!」
しかし王子は止まらない。
「よし!! セリシーヌ嬢のもとへ行く!! 僕の恋愛イベントを発生させるんだ!!」
「王子ーーー!! やめてくださーーーい!!」
側近の叫びを無視し、王子は走り出した。
◇◇◇
そのころ──
セリシーヌは庭園で、静かにお茶を飲んでいた。
(……今日こそ静かに過ごしたいわ)
そう思っていたのに──
その願いは、当然のように叶わない。
なぜなら。
「セリシーヌ嬢ぉおおおおおおおおおっ!!」
少女の婚約者の、金髪碧眼の王子が、全力で走ってきた。
セリシーヌはお茶を吹きかけた。
「……はぁ!? なんであなたが走ってくるのよ!!」
王子は息を切らしながら叫んだ。
「僕は!! あなたのために!! 恋愛イベントを起こしに来ました!!」
「帰れ!!」
セリシーヌの叫びが庭園に響いた。
しかし──
王子は止まらない。
「ガルディオが恋愛度MAXになったと聞きました!! 僕はあなたの婚約者だ!! だから僕は、あなたに褒められたいんです!! あなたのために!! 太りたいんです!!」
「太りたいって叫ぶ王子は嫌よ!!」
そこへ──
「セリシーヌさまぁあああああああっ!」
「セリシーヌさまっ……!」
痩せ型忠犬同盟の二人が走ってきた。
王子は震えた。
「なんでだ……!? なんで痩せ型の男ばかり……。セリシーヌ嬢に懐くんだ……!? 僕は……太れないのに……!!」
セリシーヌは頭を抱えた。
(……もう帰りたい)
庭園は、痩せ型忠犬二匹と、太れない王子と、悪役令嬢志望のお嬢さまが入り乱れ──この場が完全にカオスと化した。
◇◇◇




