第13話 ガルディオ恋愛度MAXイベント! 告白未満? しかし心臓が爆発する寸前!
夕暮れの王宮庭園は、金色の光が差し込み、静かで、どこか甘い空気が漂っていた。
セリシーヌは、ふくよかな影を揺らしながら歩いていた。
(……今日こそ静かに帰りたいわ)
そう思っていたのに──
その願いは、当然のように叶わない。
なぜなら。
「……セリシーヌさま」
背後から、低く震える声がした。
振り返ると──
ガルディオがいた。
いつもより少しだけ、頬が赤い!
いつもより少しだけ、息が早い!
いつもより少しだけ、痩せ型の体に肉がついている!
そして──いつもよりずっと、瞳が熱い!
「……何かしら?」
セリシーヌが問いかけると、ガルディオは胸に手を当てた。
まるで心臓が暴れているのを押さえつけるように。
「セリシーヌさま……。僕……あなたに……どうしても伝えたいことがあります」
セリシーヌは眉をひそめた。
(……嫌な予感しかしない)
ガルディオはセリシーヌへと一歩、近づいた。
夕陽が彼の白銀の髪を照らし、琥珀色の瞳が宝石のように輝く。
「僕……あなたに救われました」
「……は?」
セリシーヌは固まった。
ガルディオは続ける。
「あなたが……僕に言ってくれた言葉……『《《まずは太りなさい。話はそれからですわ》》』──あれは僕にとって、人生で初めての《《目標》》でした」
セリシーヌは頭を抱えた。
(……そんなつもりじゃなかったのに)
しかしガルディオは止まらない。
「あなたがくれたセリシーヌバー……。あなたが見てくれた僕の努力……。あなたが褒めてくれた一言……。全部……僕の胸の奥で、ずっと熱くて……」
ガルディオは、胸を押さえた。
「……苦しいんです」
「え?」
「あなたのことを考えると……。僕の胸が……苦しいんです……!」
セリシーヌは完全に固まった。
(……これ、乙女ゲームの告白前イベントじゃないの……?)
ガルディオは、震える声で続けた。
「あなたの隣に立ちたい。あなたの影を守りたい。あなたが剣を向ける先を……僕が守りたい。あなたが笑うなら……僕は何だってします」
夕陽が沈む。
ガルディオの瞳は、恋愛CGのように輝いていた。
「セリシーヌさま……。僕は……あなたのために太ります……。あなたのために強くなります……。あなたのために……生きたいんです」
セリシーヌは、心臓が跳ねた。
(……やめて。そんな真剣な目で見ないで! 私は生前読んだ物語の《《悪役令嬢》》になって、この私が生前に妄想していた理想の世界の、痩せ型イケメンたちを侮って、嘲笑って、罵倒して、ストレス解消したいだけなのに……!)
しかし──
ガルディオは、さらに一歩近づいた……。
それは、余りにも距離が近い。
近すぎる。
痩せ型忠犬のくせに、恋愛度MAXの顔で近づくな。
「セリシーヌさま……あなたが望むなら……僕は忠犬になります……。救われた忠犬として……あなたのために……」
その瞬間──
庭園の向こうから、絶叫が響いた。
「セリシーヌさまぁあああああああああっ!! 僕の罵倒を返してぇええええええええっ!!」
ルファードが地面を掘りながら走ってきた。
セリシーヌは、現実に引き戻された。
「……帰りたい」
心底疲れた声でつぶやいた。
ガルディオは、ルファードを見てため息をついた。
「……あの人、空気が読めない」
「あなたもよ!!」
セリシーヌのツッコミが夕暮れに響いた。
しかし──
ガルディオの恋愛度は、もうMAXに達している。
彼はまだ告白していない。
でも、心は完全にセリシーヌへ向いている。
そしてセリシーヌは──
(……どうして私の周り、痩せ型忠犬ばかり増えるのよ……)
少女は深いため息をつくしかなかった。
◇◇◇




