第12話 ガルディオさま、お太りになることを決意?
ガルディオは、ふと、太る修行を決意する!!
そうセリシーヌの魔法剣の噂が王宮に広まり、痩せ型忠犬同盟(?)が結成された翌日……
ガルディオは、庭園の片隅でひとり拳を握っていた。
(……僕は、セリシーヌ様の隣に立ちたい。そのためには……太らなければ……!)
琥珀色の瞳が、真剣に輝く。
(セリシーヌさまは言っていた……《《まずは太りなさい。話はそれからですわ》》と……)
その言葉は、ガルディオにとって恋愛イベントの最重要ミッションになっていた。
「よし……今日から本格的に太る修行を始める……!」
そこへ――
「セリシーヌさまぁああああああっ!」
ルファードが地面を掘りながら走ってきた。
「ガルディオ! 僕も手伝うぞ! 太って彼女に罵倒されるための修行なら任せろ!」
「違う! 僕は罵倒されたいんじゃなくて、セリシーヌさまの隣に立ちたいんだ!!」
「──方向性が違うのは知ってる! でも太るなら協力できる!」
ガルディオはため息をついた。
(……この人、面倒くさい)
しかし、自分の同士! 仲間! 心の友よ! と、勝手に思い込み、決めたルファードが、この場から去ることはない。
だからガルディオは勝手に《《太る修行を始める》》!
太る修行その①:セリシーヌバー大量摂取イベント!!
ガルディオは、セリシーヌからもらった栄養菓子――高級ラード入りセリシーヌバーを手にした。
「これを……毎日食べれば……!」
ルファードが横から覗き込む。
「それは僕も欲しい! 罵倒の味がする!」
「しない!」
ガルディオはセリシーヌバーを口に運んだ。
「……っ……! こ、これは……濃厚……! 体の奥に……力が満ちてくる……!」
(※高級ラードのため、カロリーが異常)
ルファードはガルディオからお裾分けでもらったセリシーヌバーを口に運んで、歯を動かし、感動して叫ぶ。
「セリシーヌ様の愛の味だぁああああああっ!」
「違う!! これは栄養菓子だ!!」
しかしガルディオがツッコミを入れ──その後は、胸の奥で静かに思った。
(……セリシーヌさま……あなたがくれたこの菓子……。僕にとっては、どんな訓練よりも価値がある……)
乙女ゲーム風の恋愛度上昇演出が入る。
【ガルディオの恋愛度が+10された】
太る修行②:セリシーヌの影を守る筋トレ!!
ガルディオは庭園で腕立て伏せを始めた。
「セリシーヌさまの影を守るためには……筋力が必要だ……!」
ルファードは横でスクワットをしている。
「僕は罵倒に耐えるために筋力が必要だ!!」
「方向性が違う!!」
しかし二人は、痩せ型ゆえに筋トレの負荷が高い。
ガルディオは腕を震わせながらも、必死に続けた。
(……僕は……あなたの隣に立ちたいんだ……あなたの影を守れる男になりたいんだ……)
その瞳は、乙女ゲームの恋愛イベントのように輝いていた。
【ガルディオの恋愛度が+15された】
太る修行③:セリシーヌの前での《《成果報告》》イベント!!
夕方──
セリシーヌは庭園を歩いていた。
そこへ、ガルディオが息を切らしながら駆け寄ってきた。
「セリシーヌさま……!!」
「……何かしら?」
ガルディオは胸を張った。
「僕……太りました!! 少しだけですが……!! あなたの言葉のおかげで……!!」
セリシーヌは目を丸くした。
「……本当に? ちょっと見せなさい」
ガルディオは緊張しながら腕を見せた。
いつものように細いが――昨日より、ほんの少しだけ肉がついていた。
セリシーヌは、ふっと微笑んだ。
「……努力したのね。いいわ、その調子よ」
ガルディオの心臓が跳ねた。
(……セリシーヌさま……あなたが……僕を褒めてくれた……! 僕は……僕は……!!)
【ガルディオの恋愛度が+30された】
ルファードは横で叫んだ。
「ずるい! 僕も罵倒されたい!」
「罵倒されたいのはあなただけよ!!」
セリシーヌは頭を抱えた。
ガルディオ、恋愛イベント発生──
(本人は気づいていない)
ガルディオは、夕暮れの庭園でひとり空を見上げた。
(……セリシーヌさま……あなたの言葉が……僕を変えてくれる……。僕は……あなたのために強くなる……。あなたの隣に立てる男になる……)
その瞳は、乙女ゲームの恋愛CGのように輝いていた。
(……僕は、あなたの忠犬になります。救われた忠犬として……あなたのために……)
【ガルディオの恋愛度がMAXに近づいた】
庭園の向こうで、ルファードが叫んだ。
「セリシーヌさまぁああああああっ! 僕の罵倒を返してぇえええええっ!」
ガルディオはため息をついた。
(……あの人、うるさい)
◇◇◇




