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ぽっちゃり令嬢は美男子を逆指名する〜前世でデブと罵られた私、美の基準がバグった異世界で無自覚に男たちを狂わせる悪役令嬢になりました〜  作者: かず斉入道
第1章 悪役令嬢に転生出来ましたわ!

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第10話 痩せ型忠犬同盟(?)結成の瞬間

 セリシーヌの秘密訓練がバレてしまった翌日……。


 王宮庭園には、妙な空気が漂っていた。


 セリシーヌは、ふくよかな影を揺らしながら歩いていたが――


(……なんだか、視線を感じる)


 茂みの向こうから、ひそひそ声が聞こえる。


「……来たぞ、ガルディオ」

「……ああ、ルファード。セリシーヌさまだ」


 セリシーヌは眉をひそめた。


(……嫌な予感しかしない)


 茂みががさりと揺れ、痩せ型忠犬二匹が飛び出した。


「セリシーヌさまぁああああああ!!」


「セリシーヌさまっ……!!」


 二人は同時に跪いた。


「……何の集団芸よ」


 セリシーヌが呆れた声を出すと、ルファードが胸を張った。


「僕たち、話し合いました!!」


「はい……! セリシーヌ様のために、争ってばかりではいけないと……!」


 セリシーヌは目を細めた。


「……話し合った結果?」


 二人は声を揃えた。


「痩せ型忠犬同盟を結成しました!!」


 庭園が静まり返った。


「……は?」


 セリシーヌの声が、風に溶けた。


 そんな忠犬同盟の《《謎の規約》》……


 ルファードが巻物を取り出し、胸を張った。


「第一条! セリシーヌさまの前で争わない!!」


 ガルディオが続ける。


「第二条! セリシーヌさまの影を守るのは僕! ……ただし、罵倒を受けるのはルファード!!」


「そこは譲れない!!」


「僕も譲れません!!」


「争ってるじゃないの!?」


 セリシーヌの二人へのツッコミが庭園に響く。


 しかし二人は止まらない。


「第三条! セリシーヌさまのために太る努力を怠らない!!」


 ガルディオは真剣にうなずく。


「僕は……。あなたの隣に立てるように……。まずは体重を増やします……!」


 ルファードは拳を握る。


「僕は……。あなたに罵倒されても折れない体を作ります! もっと太って! もっと罵倒されたい!」


「……あなたたち、太る方向性が違いすぎるわよ」


 だからセリシーヌの口から二人への呆れ、不満が漏れる。


 その瞬間──


  セリシーヌの負担が増える……


 だって二人は仲良く、同時に立ち上がり、セリシーヌの前に並んだ。


「セリシーヌさま!! 僕たち、あなたのために協力します!!」


「あなたの影と罵倒を守るために!!」


「罵倒は守らなくていいのよ!!」


 セリシーヌは叫んだ。


 しかし二人は聞いていない。


「セリシーヌさまのために、僕たち痩せ型忠犬は一致団結します!!」


「あなたのために太ります!!」


「あなたのために罵倒されます!!」


 二人はセリシーヌの前で歓喜するが、塔の本人は?


「……帰りたい」


 セリシーヌは心底疲れた声でつぶやいた。


 庭園の訓練生たちはざわつく。


「セリシーヌ嬢、痩せ型忠犬を二匹も従えてる……」

「同盟まで作らせるなんて……」

「ふくよか美の魔力、恐ろしい……」


 セリシーヌは深いため息をついた。


(……どうして(わたくし)の周り、痩せ型イケメンの忠犬ばかり増えるのよ……)


 そう、前世の【聖子】としての記憶が残るセリシーヌ嬢は、拗ねているお嬢さまなので──


 《《悪役令嬢》》になり、次から次へと男たちをとっかえひっかえ変え、侮り、嘲笑い、罵倒し、ストレスの解消をしたいだけなのに。


 彼女の想いとは裏腹に《《痩せ型イケメンの忠犬》》ばかりが増えるから困って仕方がないのでした。


 ◇◇◇


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