第9話 セリシーヌの秘密訓練、ついに露見する
庭園の騒ぎがひと段落したころ。
セリシーヌは、再び人目の少ない区画へ戻り、剣を構えた。
「……はぁ。痩せ型忠犬が二匹になったなんて……どうしてこうなるのかしら……」
ぶつぶつ言いながらも、セリシーヌの剣を振る動きは鋭い。
少女の体内の魔力が剣に流れ、空気が震える。
「……ふっ……!」
その瞬間――
《ぱちん!》
魔力の流れが少し乱れ、剣先から光が弾けた。
「きゃっ……!」
セリシーヌは慌てて剣を引く。
しかし、その光は茂みの向こうへ飛び、何かに当たった。
「うわっ!? ま、眩しいっ!」
セリシーヌは固まった。
(……今の声……聞き覚えがある……)
茂みの向こうから現れたのは――
【白銀の短髪】
【琥珀色の瞳】
【細い体を震わせながら目を押さえる少年】
そう、ガルディオだった。
「セリシーヌ様……!? い、今の……魔法剣……ですか……?」
セリシーヌは、剣を背中に隠した。
「ち、違いますわよ? ただの……その……光ですわ」
「光が剣から出てました……!」
「見間違いですわ!」
「僕、目が良いので……見えました……!」
セリシーヌは沈黙した。
(……まずい。完全にバレた)
そこへ――
「セリシーヌ様ぁあああああああああっ!!」
ルファードが、また木剣を折りながら走ってきた。
「今の光は何ですか!? 僕の罵倒を拒否するための新技ですか!? 僕専用の魔法ですか!? 僕のために鍛えてくれていたんですか!?」
ルファードが、また可笑しなことを告げる。
「違うわよ!!」
セリシーヌは叫んだ。
ガルディオは、セリシーヌの剣を見つめた。
「……セリシーヌさま……。あなたは……本当に、魔法剣の使い手だったんですね……」
その瞳は、尊敬と感動で揺れていた。
「僕……もっと強くなります! あなたの隣に立てるように……。あなたの剣が向く先から守れるように……!」
ルファードは嫉妬で地面を叩いた。
「ずるい!! 僕は罵倒で忠犬になったのに!! 救われて忠犬になった上に、尊敬までしてるなんて!! イベント量が違う!!」
セリシーヌは頭を抱えた。
「……お願いだから、私の秘密訓練を勝手にイベント化しないで……」
しかし、二人の痩せ型忠犬は聞いていない。
ガルディオは真剣な瞳でセリシーヌを見つめ、ルファードは嫉妬で地面を掘り始め、庭園の訓練生たちはざわつき始めた。
「セリシーヌ嬢、魔法剣使えるのか……?」
「ふくよか美の上に戦闘力まで……?」
「痩せ型男子がまた増えるぞ……!」
セリシーヌは深いため息をついた。
「……もう帰りたい」
彼女は天を仰いだ。
◇◇◇




