初めて
文学署の刑事、七曲りと羊腸と九十九折はあるコンパに潜入した。怪文書が出回っていたのである。
女子コンパでパン粉所持
そのコンパにはカメラ小僧が犇めいていた。お目当てはしょこたんとしているお人形である。木漏れ日の葉影のまだらを散らした模様の服を着ている。たい焼きのアイスを壊れやすい硝子細工でも持つように手にしている。
この世には太陽のように輝く存在と月のように照らされる存在との二つの種族がある。お人形はおそらく前者に属していた。いつもポラリスのようにじっとしてきたお人形は、自ずと光を放つことができたのである。
お人形の服に揺れ動く葉の影絵はカメラ小僧を幸せにした。
カメラを向けられたお人形は望遠鏡で覗かれるお星さまの気持ちになった。
『いつか自分はお星さまになるかもしれない』
とお人形は初めて思った。
数学好きのカメラ小僧のひとりが呟いた。
「そのお星さまはきっと特異点のないトポロジカルな星だね。広中平祐先生の電話帳に載るような。たい焼きのアイスにはこんな詩があるから」
▽ ▽ ▽
夕焼けに染まるちいさな 手のひらが たい焼きに触れて 口にする
それをすべすべした優しい手がきにしながら ぬぐう
大きな手のひらが落ちそうなたい焼きをキャッチする
真っ赤なアイスのたい焼きは いつのまにか ちいさくなって
まるで まるい 陽のなかに とろけてしまうみたいだったの
まろびそうな ふわふわ 毛の それ を 小さな手のゆびが こわごわ ふれて
こんどは やわやわ撫でて
几帳面に気難しげにすべすべ手のひらのすんなりした指がそれを包み込んで
△ △ △
たい焼きのアイスが胃袋に納まると、お人形はカメラ小僧に紛れている凸ピン(私服警官)を認めた。
七曲り、羊腸、九十九折。
お人形は煙草の匂いがする羊腸に話しかけた。
「じょしコンパでパンコしょじ。怪文書ではなくて、秀逸な回文書ね」
『この星は挙げられないな』
と羊腸は初めて思った。




