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底辺部活の青春クロスワードパズル~~陰キャな俺と地味子とギャルと……  作者: 秋ヶ瀬胡桃


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第11話 私たちの最初の本

 翌日から、俺たちクロスワード部のオリジナル部誌制作がいよいよ本格的に始動した。

 もちろん、自分たちがクロスワードを解いている姿を写真に撮って部誌に載せるとかそんなのじゃない。

 自分たちでクロスワードの問題を作って掲載するのだ。


「よしっ! 私は今回、開発総指揮兼ゼネラルマネージャーに就任します!」


 部室にある普段は使うこともないホワイトボードをバンバンと叩きながら、楯さんが胸を張って宣言した。


「マネージャー?」


「つまりね、濁川、私はまだパズルを作り慣れてないから、今回はみんなのサポートに回るってこと! 裏方なら任せてよ!」


 そんなわけで、楯さんはマネージメント担当になった。

 これが思った以上に大助かり。

 持ち前の行動力をフルに発揮してくれた。

 学校で何かの活動をするには意外と面倒な手続きが必要なことが多い。

 俺や黒須さんのような陰キャには結構苦労するのだ。

 活動的で交渉の上手な人がいると何事も早く進む。

 楯さんは、まずは職員室へ乗り込み「部活動の広報活動」という名目で、学校の備品である大型プリンターの使用許可を申請。

 さらに、生徒会から部費の残高で買えるコピー用紙の予算まで取ってきたのだ。

 紙の値段など微々たるものかもしれないが、自腹よりは遙かにマシだ。


「じゃーん! これが今回の秘密兵器、職員室から借りてきた『学校備品プリンターの使用許可証』と、中綴じ用ロングホチキスです!」


 部室の机にドンと置かれたのは、普通のホチキスの三倍くらい長さがある特殊なホチキス。

 今回の部誌は、最初の試みということもあってかなりシンプルな構造だ。

 B4のプリント用紙を2枚重ねて、二つ折りにする。

 その真ん中の折り目をこの長いホチキスでパチンと2箇所とめるだけ。

 全八ページの、いかにも高校の部活らしい手作り冊子である。


「中身のクロスワードは、濁川と黒須さんで四問ずつ、合計八問ね! 期待してるよ、二人の愛の共同作業!」


「へ、変な言い方……。ええと、ねえ、黒須さんは作れる?」


 俺が隣の席に視線を送ると、黒須さんは小さくコクンと頷いた。


「……うん。ノートに書き溜めてある。いつでも出せます」


「そっか。実は俺も、ノートに自作パズルのストックがいくつか作ってあるんだよね」


 そう、俺も黒須さんも、普段から息をするようにクロスワードのことを考えている人種だ。

 すでに手元に自作の問題がいくつもあったため、中身のコンテンツ作成には全く時間がかからなかった。


「じゃあ、俺たちの問題をパソコンの画面に入力して……」


 俺は持参したノートパソコンにインストールしておいたクロスワード作成ソフトを起動する。

 問題を入力するためにキーボードを叩き始めると、すかさず黒須さんが椅子をゴトッと寄せてきた。


「濁川君の四問目……この、ひねったカギ、すごくいいと思う」


「あ、本当? 黒須さんに褒められると自信出るなあ。黒須さんの問題は?」


「こ、これ……」


 黒須さんは、頬をほんのり赤らめながらそっとノートのページを開く。

 完成された白黒の盤面とカギが綺麗な手書きの文字で記されていた。

 簡単すぎず難しすぎず、ちょうどよい難易度だ。

 カギの文章表現もエスプリが効いていて、解くのが楽しい。


「初めて黒須さんの作品を見たけど、凄く面白い」


「あ、ありがと」


 俺と黒須さんは、ふと見つめ合う形になる。

 黒須さんが恥ずかしそうに視線をそらす。

 なんだこの甘酸っぱい空気は。


「はいはい、そこ、イチャイチャしてる時間はないよ! 早くレイアウトを完成させないと」


 楯さんもそこにいたのを俺は忘れかけていた。

 俺たち三人は、一つのノーパソの前に顔を寄せ合い、手書きのクロスワードのデジタル化を始める。

 俺の顔の両側に女子の顔がある。

 ちょっと前までの俺には考えられない状況だ。

 クロスワード作成ソフトを使えば、マス目に黒マスを配置し番号を振るという面倒な作業も楽になる。

 完成した問題のデータを印刷用のソフトに移し、冊子としての体裁を考えてレイアウトを作る。

 左右からいろいろなレイアウトのアイディアが飛び交う。

 表紙に当たる一ページ目には、部誌のタイトルと小手調べの小さくて簡単な問題を載せる。

 部誌のタイトルは未定なので、今は空白だ。

 難しい問題ほど後ろのページになるように構成する。

 ソフトを使い慣れていなかったせいで思ったより時間がかかってしまった。

 それでも楽しい作業だった。

 印刷は明日にすることにして、俺たちは下校した。


 ▽


 翌日の放課後、学校の備品である共同プリンターの前。

 俺のノーパソを無骨な形のプリンターに繋ぎ、印刷ボタンをクリックする。

 しかし、プリンターが動かない……と思ったら、何秒もたってから突然ガタンという大きな音を響かせて動き出した。


「もー、壊れてるのかと思ってびっくりしたよ。ウケるっ!」


 楯さんはお腹を抱えて笑う。

 黒須さんもクスクスと微笑む。

 ガタガタと大袈裟な騒音を立てて、俺たちの作ったクロスワードが次々と白いB4用紙に刷り上がっていく。

 手書きと違って、パソコンのフォントで印刷されたマス目は、それだけでどこかプロっぽい仕上がりだ。


「おお……! なんか、本当に本っぽくなってきたじゃん!」


 プリンターのトレイに積み上がっていく大量の用紙を前に、楯さんが目を輝かせる。

 ここからは完全な肉体労働だ。

 温かみの残る紙を2枚重ねて、きれいに半分に折り、あの長いホチキスを折り目に合わせて慎重にセットする。


「いくよ……せーの、パチン!」


 楯さんが体重をかけてホチキスを押す。

 ホチキスが無駄に大きくバネが固いので扱うのに力が必要なのだ。

 見事に真ん中でとめられた紙を開くと、そこには立派な(?)クロスワード部誌の創刊号が完成していた。


「できた。私たちの最初の本」


 黒須さんが完成した冊子を両手で大切そうに持ち上げ、愛おしそうにじっと見つめている。

 その横顔があまりに綺麗で、俺は少しドキッとしてしまった。


「よっしゃ! これであとは全校生徒にお披露目するだけだね!」


 楯さんが拳を突き上げる。

 ちなみに、三人で考えた部誌のタイトルは『交語家《クルーシヴァーバリスト》』だ。

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