21間児 裕赦(8)
「まじであれをやるのかよ…」
今試練仲間のドランが狼系の怪物の輪で突っ立っている。中々威圧感という物は身に付かないらしい。最初こそ体が狼に噛まれていたけどドランの皮膚の方が狼の牙より硬いらしく今では狼にしかとされている。でも僕は人間だ、同じペースでやってたら死にはしないが気絶するまで噛まれてそうだ。
「これじゃ埒が明かないわね。裕赦!あなたも向こうで初めてなさい。」
指さされたのは緑色の毛虫系の怪物の巣窟だった。最悪だ…
「この試練でトラウマもついでに解決して来なさい。」
「え?なんでそんな事知ってるのですか?」
「あら?私何か言ったかしら?」
「……….行ってきます。」
「ええ。行ってらっしゃい。」
何か隠しているのは確かだが今はそれを追及する時じゃないだろう。絶対に試練をクリアしてみせる。
毛虫系の怪物達の真ん中に立つ。溢れてくる殺気が止まらない。理性が吹き飛びそうだ殺気と威圧感の差は理性の有無にある。理性を見失わずに敵に怒りをぶつける、周りに恐怖を与えるイメージで…
「二人共!少し違うわよ!威圧感は周りの味方を安心させる事にも使うの、決して味方まで脅す物ではないわ!」
そうだ…逃げたから悔しかっただけじゃない….守れなかったから、安心させる事が出来なかったから悔しかったんだ。動物だって我が子を守るからこそ威嚇する。威圧感は敵に自分の強さをを伝える為にあるんじゃなく、大事な誰かを守るために、安心させる為にあるんだ。守るために周りを威嚇するイメージで…
「まだもう少し足りないね…」
「後一歩なんだけどな。」
「具体的な守るものが近くにないからね…」
その時に毛虫の一体にタックルされて首に掛けてあった春香に貰ったお守り代わりのペンダントが落ちた。急いで拾おうとしたら別の毛虫にそれを潰されそうになった。
「くっ!間に合え!」
間に合わないと思ったら周りの毛虫がゆっくりと溶けだした。
「え?」
「おめでとー!ところでそのペンダントは誰からの?」
「え?えっと初めて冒険者になった時に幼馴染が記念に買ってくれた御守りだけど…」
「けしからんなーユリア姫」
「ふしだらですねークロノア様」
「くそっ!俺だって…俺だって…」
「はいはいドラコくんは素直ないい子だからねー!きっと報われるよ、諦めないで。」
いつの間にかドラコが先に終わらせていた、なんで悔しそうなのかわからないけど僕は今自分が何かを守れた事に喜びを隠せない。
「本当に…変われたんだ…僕…」
「裕赦くんもドランくんの事ガン無視なんだね…」




