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第4話 同盟の危機?いいえ私のニートライフの危機です!

「奥様大変です!」

メイベルは自室で午後のお昼寝をむさぼっていた。


そこにゴブ美が飛び込んできた。

緑の顔が青ざめている。

ただ事ではない。


「うーん、なに〜?」

メイベルは寝起きの目をこすりながら起き上がった。


「中庭でドンゴバル族が暴れてます! 族長の息子が高熱で倒れてしまって……毒を盛られたと大騒ぎです!」


「まさか。昨日の宴会ではみんな同じもの食べて飲んでたでしょ。私も公務ってことで呼ばれたけど」


(お目にかかれて光栄ですわ、族長様。しか言わなかったけどね。あとは食べて飲んで、おしゃべりしてるだけ。なんて楽ちんな公務……)


ドンゴバル族は国境地帯に住んでいる。

王国と同盟関係にある人間の部族だ。

一昨日からお城に客人として族長の一団が招待されていたのだ。


「そう言って守備隊長も説得しているんですけど、彼らは聞く耳持ちません。今にも戦いが始まりそうです!」


今朝いちばんに国境で不逞モンスター大量出現の知らせがあった。

アレクシスと「魔王軍幹部」はその対処に急遽出動していて、不在にしている。


その瞬間、メイベルの脳裏に最悪の想像がよぎった。


このままでは戦いに

ドンゴバル族との同盟は終了

辺境は戦乱状態

私のホワイトニート生活終了

あの王都のボロ実家に強制送還


(そんなの、絶対に嫌ぁぁぁああああ!)


「許しません!」

メイベルはテーブルをバーンと叩いて立ち上がった。


(私のニート利権は、守らなくてはならない!!!)


◇◇


「これは毒なんかじゃない、石化よ」

「なんと!?」

族長が目を見張った。


メイベルは薬草の本のページを示した。


中庭で睨み合う一触即発の両者をマジギレしてなんとか宥め、メイベルは族長の小さな息子の様子を見ていた。

高熱を出し、はぁはぁと荒い息で苦しんでいる。


「指先が灰色になっているでしょう?これは……ゴブ男、またバジリスクがお城に迷い込んでないかしら?」

バジリスクは視線が合ったものを石にする魔力を持つ、危険なトカゲモンスターだ。


「ソウイエバ、今朝幼体ヲ一匹、守備隊ガ捕マエマシタ」

「それよ! この子、目が合ってしまったのね。幼体だったから即石化は免れたけど……このままでは一日持たずに完全石化してしまう」


メイベルは素早く本のページをめくった。


「バジリスクの石化を解くには……上級復元魔法グレーター レストレーションか、マンドレイクの煎じ薬を使うしかないわ」


(魔術師のゼノスは閣下と討伐遠征中、そもそも彼が上級復元魔法を使えるかわからない。とすると……私がやるしかない!)


「マンドレイクは私が先週見つけてあります。隊長さんはこれから伝える残りの材料を集めてください」

メイベルは城の守備隊長に指示した。

「ゴブ男、ドリルと馬車を用意して、それと耳栓も!」


マンドレイクは引き抜く際にとてつもない叫び声を上げるのだ。

先週間違えて踏んづけ、その一撃を浴びたばかり。

まともに聴いたら大変なことになる。


「ハイ、奥様!」


メイベルの瞳は燃えていた。


(私のホワイトニート生活は! ……終わらせない!! 絶対に!!!)


◇◇


「最後の一本、慎重に行くわよ……」

「ハイ、奥様……」

メイベルたちはあの草原に戻ってきていた。

マンドレイクはすでに4本採取した。


しかし、脳みそに直接おろし金をかけられたような悲鳴を聞き続け、全員疲労困憊だ。

ドリルは2本目で気絶した。

耳栓はとっくに吹き飛んでいた。



メイベルは覚悟を決めて最後のマンドレイクの周辺にスコップを入れた。


「キェェェェェエエエエェェェ!!!!!!」


途端にマンドレイクの悲鳴がほとばしる。

本日最強のデスボイス!


(つらすぎ!……鼻血出そう……でもあと一息)


メイベルは傷つけないよう手早くマンドレイクの頭部を露出させていく。

悲鳴はどんどん大きくなる。



メイベルはスコップを園芸ナイフに持ち替えた。

根っこのオッサン顔の部分を切り落とすのだ。


「これで終わりよ!」


ズボッ!


とつぜん、マンドレイクはロケットのように土の中から飛び出した!


「うそー!!!歩行型なんて聞いてないぃ!」


ガッ!

「ぶふぉっ!」


メイベルの鼻っ柱にマンドレイクの硬い根っこが激突する。

マンドレイクはメイベルの顔を踏み台にして空高く、華麗なポーズで飛び上がった。


「オー吉! キャッチィィ!!」

メイベルが鼻血をブシャァと吹き出しながら鬼の形相で叫んだ。


オー吉は飛び上がったマンドレイクの足の部分を掴む!


「ギェェェ!!」「ギェェェ!!」


マンドレイクは足を掴まれた状態でさらに空に向かってジタバタともがく。

あまりの爆音にオー吉は白目を剥きながら泡を吹く。

しかしオークの怪力はマンドレイクを離さない。


(私のニート生活……諦めない!)


メイベルは園芸ナイフを口に咥えると、バンザイ立ちとなったオー吉をよじ登り始めた。


「奥様!」


ゴブ男も必死にメイベルを押し上げる

マンドレイクは叫び続けた。


「ギェェェ!!」「ギェェェ!!」


(……でも……もう無理)


オー吉の肩まで登ったメイベルは……ついに力尽きた。


その時!


シュバッ!!


マンドレイクの頭が、飛んだ!!!


「——頑張ったわね、お嬢ちゃん」


アサシンナイフを逆手に持ち、

仰向けに落下するメイベルの上を飛び去った女——


「魔王軍幹部……C……幻術使いのパメラ……」


ゆっくりと落ちていくメイベル。


しかし硬い地面の感触はこなかった。

かわりに感じたのは、逞しい男の腕。

メイベルの視界に入ったのは、あのペールブルーのクールな瞳。


「閣下、なんで、ここに……」

(あぁ、今の顔を見られたくなかった……)


メイベルはそのままパタリと意識を失った。


「オー吉も頑張った!」とか「パメラさんかっけー!」と思っていただけた方は、ぜひページ下部の【★★★★★(星)】(5コで!)と【ブックマーク】をぽちっと押してやってください。

メイベルの鼻血が早めに止まるかもしれません!

(感想も「メイベル必死すぎ!」とかでオッケーなのでぜひお願いします!)

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