繋がれし石
ユリカがオージュの部屋を訪ねて来たのは、もう1時間前になるだろう。
初めのうちはいつものようにテンションの高いユリカだったが、コーキが遊び疲れて眠ってしまうと、突然真剣な顔で話し始めた。
「ねぇ…オージュ。
あなた、フィーアを持っているのでしょう?」
「え?フィーア?
なにそれ?」
全くわけが分からないと言ったように答えた。
「惚けるんじゃないわよ?あたしの持ってるフィーアが反応してるんだから」
そういうと、胸元のペンダントを差し出した。
すると突然、それが淡く光り始めた…
「な、なにこれ?
これは…
まさか『繋がれし石』?」
“天空の世界・フィーアレンス”には、こう書かれている。
“ファウスは、『繋がれし石』を壁にはめ込んだ。
「これで…フィーアレンスへの道が…
え…?何も反応しない…。ん?他にも穴が…。
一つじゃだめなのか?」
ファウスは落胆した。
この石を一つ探すのにもこれほど苦労したというのに、他にも複数必要だというのだ”
「繋がれし石…まさか、本当の名前はフィーアというのか?」
「その通りよ。
それが、あなたに反応している…
どういうことだか分かる?」
「そんなこと言われても…オレはそんなもの持っていないし…
なぜ反応しているのか…」
混乱したオージュを見て、ユリカが聞いてきた。
「あなた、本当に持っていないの…?」
「うん、隠すつもりもないよ。
持っていたら、素直に言うし」
「じゃあ…
なぜあなたに反応するのかしら…」
困惑している。
「でも…まさかあの物語りにでてくる“繋がれし石”が、現実に存在しているとは…
君はどこまで知っているんだい?」
するとユリカは話し始めた。
「私がこの石を手に入れたのは、ニニアの遺跡よ…」
ユリカは、度々ニニア付近の遺跡を訪れていた。
遺跡に行く理由は、オージュ達とは違い、金目の物を手に入れるためであった。
遺跡では稀に金や銅が発見されている。
遺跡の入口には監視の者が数人いるが、目を盗んで侵入することくらい、ユリカにはたやすいことであった。
奥に進んでいるうち、通路に壁画が書かれていることに気付いた。
「なんなのよ、これ…
地上があって…
…
空の上に、また地上が…?」
その現実離れした壁画の世界にうす気味が悪くなったユリカは、通路を引き返すことにした。
何時間歩いただろうか…
何度も道が別れたのだが、覚えているはずもなく。
目茶苦茶に歩いて来た…
「はぁ…はぁっ…
ここ………どこよ…?」
疲れ果てたユリカは、下に尻餅を着いて座り込んでしまった。
「ん……?
なにかしら。」
何かを見つけたユリカは、そこへ這っていった。
「綺麗…な石…」
薄い緑色に輝くその石は、一瞬ユリカの心を救った。
すると突然、その石は緑色の光りを放ち、ユリカの手の平からゆっくりと浮遊し、フワフワと進んで行ってしまった。
「な、なにこれ…
でも、、ついていってみようかしら…」
それから1時間ほど歩いた。
「この石は何処へ行こうとしているのかしら…?
出口だったら有り難いけれど…
あ…
光だわ!」
その石は光るのをやめ、役目を終えたかのように下に転がった。
ユリカはその石を拾い上げると、遺跡から脱出した。
「それから私はその石について調べあげたわ。
そしてある文献を見つけだして分かったの。
あの壁画も含めて考えても、この石は“天空の世界・フィーアレンス”にたどり着くための鍵のような物、フィーアだということを」
オージュは興味深々と言った様子で話しを聞いていた。
「夢みたいだ…
フィーアレンスはお伽話じゃない。
イメリアの研究結果は間違っていなかった!」
真剣な表情は、子供の頃の無垢なオージュに戻っていた。
「でも…なぜ君はフィーアを探しているの?」
この問い掛けにユリカは微笑んだ。
「当たり前じゃない…
天空の世界を見つけだしたらそこは楽園よ?
本には自然と動物だけの世界と書かれていたわ。
イコール、人の手が触れていない土地なのよ。
情報料も含めて、発掘すれば資源が見つかる可能性大。
私は大金持ちよ!」
「………」
オージュは呆気にとられていた。




