フィーアを繋ぐ者
大きな開け放たれた扉の奥には、大柄で短髪の男が背を向けて座っていた。
そこへ軍司服のようなものを着た男が数人、小走りで向かってきた。
「ジラーハ大佐!
タユ・ニニアからの派遣隊到着したもようです!」
その声を聞き、ゆっくりと男がこちらを向いた。
「そうか…
フィーアを繋ぐ者…
やっとこの目で確かめられる…」
そういうと男は、傍らにあった鞘に納められた剣を手に取った。
「おい、お前。
この、我が相棒リテウスを丁重に研いておけ…
出番は近いであろう…」
「はっ!…」
剣を受け取ると、一礼して部屋を後にした。
「うぇっくしょん!」
晴天の青空に、リーベルトの大きなクシャミが鳴り響いた。
「オイオイ…大丈夫なの?
あんなムチャするからだょ…」
呆れたように話し掛けてくるオージュ。
「うるせぇ、こんな都会にくんの初めてだろ?
気合い入れよーと思ったんだよ」
「ふふっ…バカだなぁ…。
でも、ホントすごいところだねぇ!なんか軍人みたいな人もいるし」
派遣隊を乗せた船は、無事イリア帝国へ到着した。
世界有数の先進国であるが故、軍司国家としての名声も少なくなかった。
海に囲まれ貿易も盛んで、特に魚介類の生産は突飛していた。
街にはいつでも歌が流れ、賑やかに人々は暮らしていた。
派遣隊を乗せて来た船からは、10名のメンバーが降りて来た。
「ん?だ、誰だあれ?」
リーベルトの視線の先には、一人の男が映っていた。
いかにもナルシストのようなその身のこなしに、リーベルトは少し鳥肌がたった。
「な、なんかすごい個性の強そうな人だね…」
引き攣った表情で答えた。
長髪をリボンで縛り、貴族のような服装をしている。頭の先から指の先まで、神経を使い優雅に歩くが、それが逆に滑稽に映る。
「………
う、うわっ!こっち見たぞ!」
その男は視線を二人に向けると、ステップを踏みながら近づいて来た。
「はろ〜、お二人さん。
君達はタユの派遣者だよね?」
話す顔の位置が、異様に近い。
「は、はい、そうですけど。あなたはニニアの…」
話している三人に、他者からの視線が集まる。(ジロジロ)
「ミエレだよ、以後ヨロシク」
「あ、ミエレさん…。
ヨロシク(絡みづらいなぁ)」
「ここに三枚のカードがあるよね…」突然カードをさしだし、二人に向けた。
「え、えぇ…」
「ここから一枚づつ選んでよ」
「は、はぁ…」
仕方なく、従うことにした。
オージュは真ん中。
リーベルトは左を選んだ。
「んで、なんなんだ?」
リーベルトが聞いた。
「君達の…運命を占おう」
そういうと、オージュのトランプを表にした。
『嘆きの王』
そう書いてあった。「嘆きの王…どうやら、あなたの中に“未知なるモノ”が住み着いているようです…
その力、特別な何かが、発散されずに燻っています。
近いうちに…開放されるときが来るでしょう…」
突然に真剣な印象で話すミエレに、二人は引き込まれそうになった。
「じゃあ…そっちの君」
そういうと、リーベルトのカードを見つめた。
『突然の雷』
「ほう…あなたは、今の現状に満足していないでしょう…
しかし、安心して下さい。
あなたの想像のつかないような出来事が待ち受けています。
それによって、自分では気付かなかったような己の一面に出会うでしょう…
ってまぁ!
こんなところだよ!」
呆気に取られる二人を尻目に、まだ喜劇は続いた。
「ちなみに…残ったカード…
僕の運命を記している…
ふふっ…
そうか…
今は言わないで置こうね」
そういうと、後ろ手に“チャオ”と言い残し、ミエレは去って行った。
「なんか…変なやつだけど、妙な魔性をもったやつだな」
リーベルト口を尖らせて言った。
「うん…なんか意味深なことばかりだったね…
…」
「それより、あいつ自身の結果はなんだったんだ?」
「確かに…」
気付くと時刻は夕方になっていた。




