決意
それから幾日か経ち、シュリアがオージュの家へ立ち寄った。
「そう…あなたはあのイメリアの娘さんなの」
驚いたようにマイラが言った。
「やはりお母様の後を継いで、この探索家の道をお選びになったのね」
「いえ、特に母の後を継ごうと言う気はなかったんです」
そう言った後シュリアは、うつむいてしまった。
その後、少しづつ話し始めた。
「ある…文献を見つけたんです。
それは、母の書斎にあったものなんですけど…『フィーアレンス』のお話しはご存じですか?」
「それは…あのお伽話の…天空の世界、ですよね?」
「えぇ、母の研究結果の中で、フィーアレンスについての文献があるんです。
その中に、ある言葉があって…」
『わたし達が思い描く全ての出来事に―。
起こりえないものなどひとつもないのだ―。』
「知ってるわ、その言葉」
「だと思います。でも、本当はその言葉は、『天空の世界・フィーアレンス』に向けられた言葉だって知ったんです」
天空の世界・フィーアレンス…
世界の人々に、はば広く読まれている物語りだ。
俗に、お伽話として認識されているこの物語りに触発され、真剣に研究に取り組んだイメリアは、その結果を大量の書物として残していたのだ。
「わたしは、その書物を色々な所に持って行きました。だけど…認めてくれる人はいなかった…。」
その時、ステーキを食べていたオージュが話しに入り込んで来た。
「シュリアさん、フィーアレンスは本当にあるの!?」
無垢な瞳で問い掛けた。
「……オージュ…。
わたしは…フィーアレンスは天空に存在すると信じてる…。」
「ホント!?
僕、フィーアレンスのお話し大好きなんだ!
本当にあるなら…いつか僕が見つけだすよ!」
オージュの言葉に、二人は目が点になった。
「オージュ…
信じてくれるのね…?
じゃあ…わたしも諦めない!
一緒にフィーアレンスに行きましょう」
「うん!絶対に見つけだす!」
それから七年…
時間はゆっくりと流れ、マイラは天に召され、それと同時にオージュを青年へと成長させた。
未だ『フィーアレンス』の存在を信じ、シュリアとオージュはまた巡り会う……
イリアへ向かう派遣隊を乗せた船は、調度中間地点にたどり着いていた。
ザァ………ッ……
ザァ………ッ……
波の音だけがオージュの耳に聞こえている。
既に日は落ち、時刻は9時を回っていた。
一人個室の部屋に休んでいたオージュは、少し外に出てみることにした。
「ふぅ…
少し冷えるな…」
ゆっくりと先端に歩いていく…
その時、聞き慣れた声が聞こえた。
「おい!オージュ!」
「あ、リーベルト」
リーベルトはタユでのオージュの幼なじみで、今回のプロジェクトに参加していた。
年齢は同じで、性格はオージュと正反対。
しかし、だからこそ仲がいいのも頷けた。
「なにしてんだ?一人で。またお得意の空想か?」
少しはにかんで言った。
「うるさいな、リーベルトこそどうしたの?」
「ん?
あ、オレはこれから行くイリアに向けて、宣戦布告だ!」
そういうと、船の先端の手摺りに上り、腰に手をあて大きく息を吸い込んだ。
「お、おい!危ないって!」
オージュがとめようとした。
「うぉ〜〜〜〜っ!!!」
リーベルトの雄叫びが海に響いた。
「なにやってんのさ!
それに何の宣戦布告だよ!」
オージュが突っ込んでいると、
「う、お、おっっとっとっと!」
フラフラとよろけ始めた。
「ちょっ、オージュ、た、たすけ…」
ドボーンっ…
「お、おいっ!リーベルト!」
リーベルトは、海の奥深くへと消えていった…




