回想
「いやだ!絶対に行く!」
眉間にシワを寄せて、小さなオージュは怒鳴っていた。
「いい加減にしなさい!あそこはジーラーがうろうろしてるのよ!?あなたみたいな小さい子は、パクッ!て一口で食べられちゃうんだから」
年の功は50〜60くらいであろうか。少し太った女性がオージュに言い聞かせる。
その女性の瞳は、エレメンタルグリーンに光り、深い慈愛が感じられるようである。
「ふんっ!マイラさんに言ってもダメだね、じゃあいいもん!」
そういうと家から飛び出して行ってしまった。
「もぅっ…言い出したら聞かないんだから…」
「フフッ…いつも怒られてたな……。マイラさん…。」
7年前のタユでは、ちょうど探索員が盛んに訪れ、その中の一人にシュリアの姿があった。
「ふんっ!マイラさんなんかにたよらないよっ!自分でどうにかするんだ!」そういいながら探索員の集まる集会所に走って行った。
その時である、
「ドンッ!」
何かにぶつかった衝撃で、遠くに飛ばされた。
「イテテテ…」
オージュが起き上がろうとしたとき…
細く白い手が、差し出された。
「大丈夫?ボク」
とても細身で長い黒髪を揺らせ、眼鏡をかけた女性がそこに立っていた。
「う…うん」
起き上がったオージュは、突然話し始めた。
「おねぇさん、探索員の人ですか?僕、ヒルワナ遺跡に行きたいんです!一緒に連れていってくれないですか?」
そう話すオージュを見つめ、驚いたように女性が答えた。
「そっかぁ、ヒルワナに行きたいのね?…
でもね、あなたみたいな小さい子、連れていくことはできないなぁ」
申し訳なさそうに話すこの女性を見て、オージュは不思議なキモチになった。
(他の大人はみんな
「うるさい」
とか
「あっちへいけ!」
とか…そんなことばっかりだったけど……御最もな説得だな)
そんなことを思った。
その女性にくっついて動き回っているうちに、オージュと女性は打ち解けていった。
「オージュ、あなた本当に十歳なの?そんなことも知っているなんて」
「へへへ、だって本に書いてあったもん。あ、その本貸して、シュリアさん」
毎日のようにでかけていくオージュを見て、マイラは少し心配になった。
「オージュ、毎日集会所に行ってるみたいだけど。邪魔しちゃダメよ?」
「分かってるよ、マイラさん。」
「あなたに何かあったら、マイラさん心配して死んじゃうかもしれないわよ?」
「え、なんだよいきなり…そんなこと言わないでよ…。僕にはマイラさんしか家族がいないんだから…」
「そうだね、ごめんね?オージュ。」
「ううん、僕が悪いんだよ。あ、そうだ!今度シュリアさん呼んでもいい?」
「うん、いいわよ。じゃあカバルタのステーキを作りましょうね」
「やったぁ」
これほどまでに、血の繋がらない子供を可愛がることができるものだろうか。
それほどまでに、親子以上の関係で二人は結ばれていた。




