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最凶公爵令嬢は微笑まない―誰も、彼女の季節を止められない―  作者: 玉響すばる


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あとがき

 ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。


 この物語は、いわゆる「断罪もの」「婚約破棄もの」の快感を土台にしつつ、そこから一歩だけ先へ進めたいと思って書いた話でした。


 誰が悪いか。

 誰が勝ったか。

 誰が落ちたか。


 もちろん、それらは物語としてとても大事です。

 実際、最初の断罪と反転があるからこそ、この話は立ち上がっています。


 ですが、それだけで終わると、どうしても人間が少し平板になるとも思っていました。


 王太子は本当にただ愚かだっただけなのか。

 聖女は本当にただ醜かっただけなのか。

 そして最凶公爵令嬢は、本当にただ一方的に強いだけの存在なのか。


 このあたりを、ちゃんと“その後”まで描きたかったのです。


 だからこの物語では、断罪の瞬間よりも、断罪のあとに何を繰り返すかを重視しました。


 王太子エドガルドは、派手な謝罪をしませんでした。

 劇的な改心の告白もしていません。

 その代わり、確認を怠らないこと、感情をそのまま公の判断へ混ぜないこと、見栄えより仕組みを優先することを、少しずつ覚え始めました。


 フィオナも同じです。

 彼女は綺麗な聖女にはなりきれませんでした。

 必要とされたい。

 認められたい。

 見返したい。

 そういう気持ちをたくさん持っています。


 けれど、その混ざりものを少しずつ自覚した上で、それでもなお何かを残したいと思い始めた。

 そこに、彼女なりの変化を書いたつもりです。


 そしてレティシアは、最後まで“最凶”であり続けました。

 それは誰かを容赦なく踏み潰すという意味ではなく、自分の人生の中心へ他人を置かない強さとしてです。


 終わったものへ熱を戻さない。

 必要な整理だけを行い、あとは自分の道を進む。

 この強さは、派手ではないけれど、とても怖く、とても美しいものだと思っています。


 個人的に、この話で一番書きたかったのは、  「終わりは赦しではなく、相手をもう人生の中心に置かなくなることで訪れる」  という感覚でした。


 現実でもそうだと思います。

 全部が綺麗に解決することは少ない。

 傷が消えることも少ない。

 でも、相手を見続けなくなった時、ようやく人は前へ進ける。


 この話が、少しでもそこを描けていたなら嬉しいです。


 また、この作品はかなり静かな終わり方を選びました。

 最後にもう一度大きな断罪や絶叫や劇的な再会を入れることもできましたが、今回はあえてしませんでした。


 なぜなら、この物語の結論は、誰かをもう一度打ち負かすことではなく、

 前と違う習慣をそれぞれが持ち始めること

 だと思ったからです。


 王太子は実務で。

 フィオナは自分の願いの見つめ方で。

 レティシアは境界の守り方で。


 人は一瞬では変わらない。

 でも、繰り返しは人を変える。

 その感覚を、最終話まで一貫して置いていました。


 最後に。


 レティシアはこれからも、きっと我が道を行きます。

 エドガルドは、たぶん何度も迷いながら、それでも前よりましな判断を覚えていくでしょう。

 フィオナは、まだ揺れると思います。けれど、前より少しだけ、自分の混ざりものを知った上で歩けるはずです。


 誰も完璧ではありません。

 でも、完璧でなくても前よりましな選択はできる。


 そんな物語として、最後まで見届けていただけたなら幸いです。


 本当にありがとうございました。

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