307. 買うだけ買って使わないことってあるよね
ペスケーラ王国までの道、野営一回目。
私達は2ルームテントで休みます。
【虹の翼】のお姉さん達は、夜の食事を辞退して自分達で食べるということだった。ペスケーラ王国までの道中は干し肉、硬いパン、スープで過ごすことにしたらしい。毎日美味しすぎて元に戻れなくなりそうだから、と言うことだった。
外に結界は張ってあるけれど、交代で夜番もするんだって。お姉さん達は冒険者だから、感覚が鈍ったらいけないもんね。
フィガロギルマス達もお姉さん達と一緒に食事をするらしいので、今夜は自分達だけでご飯を食べることになりました。
「イクラたっぷりマグロ丼ってのが食べてみたい」
「わたち、食べゆ!」
私も食べたい!
では氷華リクエストでイクラとマグロ丼に決定ね。
そうだ。せっかくだから、もう一種類用意しようかな。
アブライセの漁師さんに貰ったお魚と、南の島で採った貝や海老などは生食オッケーだって鑑定ちゃんが言っていたから、贅沢な海鮮丼も作っちゃおう。
まずはホタテっぽい貝。
無限収納内で解体し、いらないものを清浄で消去。
貝柱だけをバットに出してみる。肉厚でおっきい!美味しそう。
鑑定ちゃんも美味って言ってるね。楽しみ♪
次にアブライセでもらった三種のお魚も無限収納内で解体する。
いらないものは清浄で消去して身の一部をバットに出し、鳳蝶丸に切ってもらう。
ボタンエビっぽい海老も同じように解体、バットに入れておく。
砂漠でドロップしたレインボートラウトの身も鳳蝶丸に切ってもらう。
以前解体した滄海マグロの赤身、大トロも切ってもらう。
再構成で小粒にして漬けた、イクラの醤油漬けも準備しておこう。
これら全てを清浄して雑菌等を取り除き、氷華に程よく冷やしてもらった。
では、海鮮丼を作っていこう。
時間がないので、酢飯は再構築で用意する。
大きめの丼に酢飯を入れ青じそをしき、先ほど用意した海鮮をのせていく。
醤油漬けのイクラもたっぷりのせて…。
贅沢!盛り盛り海鮮丼の完成です!
「おおっ、美味そうだな」
「あいっ!」
一番綺麗に出来た海鮮丼をオリジナルとして無限収納に仕舞う。
作った他の海鮮丼(崩れていたり、材料が偏っていたり、足りなかったりするもの)を先に食べてね。
前回作ったイクラたっぷりマグロ丼(中トロ)のオリジナルもあるから、こちらが食べたければ複写するよ。
おかわりもあるから沢山食べてね。
では、いただきまーす!
「主殿、どうぞ」
「あーん。んむっ、おいちい」
私は海鮮丼を選びました。
貝柱は甘く、プリプリしていてとても美味しい。
アブライセのお魚は、寒ブリ、鯛、鯵のようなお魚だった。うわあ、めっちゃ美味しい!鯵みたいなお魚は、生姜醤油でいただいたよ。
レインボートラウトの身は脂がのっていて蕩けるよう。
ボタンエビもどきもプリップリ。上品な甘さがあって、とても美味しいよ。
はあ…。少しずつだけれど、全種類いただきました。
満足、満足♪
皆はどちらの丼もおかわりしまくっていた。
「そういや、焼き魚はあるか?お嬢」
「うん」
アブライセでお姉さんがくれた焼き魚も出す。
鳳蝶丸がお醤油をちょっと垂らして、白いご飯を食べ始める。
「わたち、食べたい」
お腹がいっぱいだけれど、思わず私も食べちゃった。
干物は身が香ばしくて味が凝縮されて、すっごく美味しかった。
そのうちアブライセに行って、焼き魚を買い足すんだ♪
眠るまでに少し時間もあるので、考えていたことを実行しよう。
まずはバランスボールエクササイズ(DVD付)とトレーニングジムマニュアル(DVD)を我が家の皆に渡す。
「こえ、観ゆ。ちゅたいたた、覚えゆ」
「ジム部屋にある器具の使い方ですね」
「あい」
私では説明が出来ないので、皆が使い方を覚えてお姉さん達に伝えてください。
「了解。面白そうだし、俺達も使っていいか?」
「あい、いいよ」
伝説の武器の体がパンプアップするかわからないけれど…。
今だから告白します。
形から入って買いそろえると満足し、結局ジムに通わなかった過去があります。
友人達とキャッキャしながら水を入れるダンベルとか、スライドボードとか、バランスボールとか買ったなあ…(遠い目)。
DVD付の本を買ったり、友達からジムにある器具の使い方を教えてもらったりしたっけ。
結局自分ではほぼ使ったことがないけれど、器具だけは知っているという。
でも、ほら。フェリアで役に立ったよ!うん。
と言うことで、器具やバランスボールの使い方は皆にお任せして、私は次の行程に向かうのだ。
向かうのだっ。ハハハハハハハ!
一人で野営地外にやってまいりました。
エクレールお姉さんが早速夜番をしているね。
「ゆきちゃん、どうなさいましたの?」
「あいあい。だいじょぶう」
エクレールお姉さんに手を振って、無限収納のお着替えテントオリジナルの'オリジナル'を複写、空いている場所に出す。自分でペグ打ちができないから、結界4(立体)でテントを囲って転倒防止もしておく。
では、色々弄っていきまーす!
オリジナルの'オリジナル'とは、空間操作で広げていないただのテント。
この中を空間操作で陸上競技場ほど、約五万平方メートルに広げ、天井は六十メートルの高さにする。
何となく床に四百メートルの陸上競技用トラックも作ってみました。
テント内側に沿って結界4(立体)を張り、物理、魔法、いかなる攻撃も通さない、音漏れ防止、振動は外に響かないとする。
床に結界4(平面)を二重がけして張り、滑らないを付与しておく。
天井にはLED高天井用照明器具も設置予定。
鳳蝶丸に魔道具化をお願いしよう。魔石はキングのを複写すれば間に合うかな?
外に出てテントに結界3を張り、外からの攻撃は全て防御にする。そしてまた無限収納に仕舞い、テントに[室内訓練場・仮]と名を付けた。
「まっちゅや」
テント内は照明がないと真っ暗なので、ランタンを沢山浮遊させて見えるようにする。強い光ではないのでぼんやりとした視界だけれど、今はこれでいいや。
他に必要な物はあるだろうか?うーん…。
何を用意したらいいのかわからないので、要望があった時に作るって感じでいいよね。
「おねしゃん」
「お呼びになりまして?ゆきちゃん」
まずはエクレールお姉さんに声をかける。
「あえ、ちゅんえん、しゅゆ」
「あえちゅんえん?こめんなさい。どなたかに…」
我が家の皆以外は私の言葉が通じにくい。
どうしようかと思っていたら、レーヴァが外に出て来てくれた。
「大丈夫かい?姫」
「おねしゃん、テント、魔法、たたたう、ちゅんえん、しゅゆ」
「魔法や剣術の訓練場を作ったと姫が言っているよ」
「車の中の訓練場ではなくて?」
「あれは体を作る場所だね。とにかく行ってみよう」
三人でテントに入る。
「まあっ、凄いわ!」
「これまた広いねえ、姫」
だだっ広くて陸上競技用トラックのあるただのテントです。
「照明、あと。ひちゅよう、あゆ?」
「照明はあとで設置するようだよ。何か他に必要なものはあるかい?」
「ここは魔法も使えますの?」
「あい。てったい、はゆ。とーでち、とわえない」
「内側にも結界が張ってあるので、どんな攻撃でも壊れないそうだよ」
「素晴らしいですわ!」
照明を取り付けたら本格的に使用できるから、必要なものを考えておいてね。
エクレールお姉さんは、夜番の交代時にローザお姉さんにも伝えると言っていたので、今日はここまででいいかな。
[室内訓練場・仮]を無限収納に仕舞う。
「そろそろテントに戻るよ?」
「あい。おねしゃん、また、あちた」
「ええ。また明日お会いしましょうね」
エクレールお姉さんは夜番の続きをするみたい。
私はレーヴァに抱っこされ、2ルームテントに戻る。
皆は自分達のスペースであるリビングで、本を読んだり、PCでDVDを観たりしていた。
「鳳蝶まゆ」
「ん、どうした」
まずは鳳蝶丸に[室内訓練場]テントの説明をし、照明を魔道具化してほしいとお願いする。
「面白そうだな。任せてくれ」
「おねだい、ちまちゅ」
再構築した大規模スポーツ施設の高天井用LED投光器を二台出し、鳳蝶丸に渡す。
「一台は解体用だな」
「あいあい」
鳳蝶丸は解体して組み立てるのがわりと好きなので、念のため二台渡しておくね。一台魔道具化してくれれば、あとは私が複写するよ。
「明日、お嬢に魔石の加工を頼みたい」
「わたた」
「それから俺の作業部屋を、家の作業部屋と同じ大きさにしてもらえるか?」
「あいあい」
2ルームテントにある鳳蝶丸の作業部屋をお家の作業部屋と同じ広さにし、設備も道具も全て同じにする。こちらでも車の整備が出来るようにね。
「ありがとな、お嬢」
「あーい!」
さあ、そろそろ寝る時間だぞ。
そう言われ、鳳蝶丸からレーヴァに託される私。
「さあ、姫はもう寝ようね」
「あい。おやしゅみ、しゃい」
「おう、お休みな」
明日の朝には大凡の形は出来ているかな。
楽しみ♪
桜吹雪号は、翌日も次の野営地に向け道なき道を走っていた。
「はあ…」
「おねしゃん?」
レーネお姉さんがちょっぴり力なく項垂れている。
「ああ…」
「おねしゃん?」
どうやら硬いパンと干し肉、簡単なスープで過ごしたのが響いているらしい。
旅の間、週何回かは冒険者用の食事にして慣らしておかなくてはいけないとローザお姉さんが苦笑する。あとはやはり身体が鈍っているのが気になるとのことだった。
「確かカラにダンジョンがありましたよね?」
「ああ、あるな」
私達の目指しているのはペスケーラ王国のヴァルタメリ。港のある大きな町で、帆船を眺めてから海を渡る予定なんだ。
そのヴァルタメリ近郊に、ダンジョン保有の町[カラ]があるんだそう。
「時間に問題がなければカラに行ってみませんか?」
「いいのかい?」
「私も体を動かしたいと思っていたところなんです」
フィガロギルマスの提案を聞いて、ローザお姉さん達が嬉しそう笑う。
時間は稼げたし、フィガロギルマスが良いと言うのであればカラのダンジョンに潜ろうと言う話になる。
我が家の皆もやる気満々だし良いかな?
ちなみにフィガロギルマス達も一緒に潜るらしいよ。
「私もディリジェンテ君も冒険者登録をしています。クラスCで強くはありませんが…」
おおうっ、そうなんだ!
クラスCならば十分強い気がするよ。
「旅に出てから何もしていないので、少し鈍っていると思います。私達もあの部屋をお借りしても良いですか?」
もちろん良いよ!
こうして我が家の皆とフィガロ組、お姉さん組が、少人数ずつ交代で鍛えることになりました。
最初はもちろん我が家の皆が講師になるからね。怪我の無いように気を付けてね。
「いい汗かいた。魔獣相手とは違うけれど、鍛えられて私の身体が喜んでいるよ」
「汗をかいたあとにシャワーを浴びる。最高だね!」
ローザお姉さんとリンダお姉さんのお顔がツヤッツヤ。
「明日、筋肉痛になりそうです」
「キツイ…」
ディリジェンテさんとエレオノールさんは早速バテていた。
無理のないように気を付けてくださいませ。




