301. 進め、桜吹雪号!どんな悪路もスロープで解決☆
翌朝。
まだ薄暗いうちに王都の外門へやってまいりました。
すでにルーチェさんとヴァロさん、ピメイスさんと精鋭達が待機している。そしてモッカ団長、ピリカお姉さん、ヴィーサスさん、ルオカさんも私達を待っていた。
「おはよ、どじゃいましゅ」
「おはようございます。本日より数日間、お力添えを賜ることとなり深く感謝申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします」
「おはよう。どのような道中になるのか、楽しみにしておるぞ」
ルーチェさんとヴァロさんはワクワクしているようだった。
「国王陛下より、皆様へ心より感謝をお伝えするよう言付かっております。またロストロニアン王国にぜひともいらしてください。機会があればミールナイトにも伺いますとのことです」
「あいっ!」
モッカ団長達はお見送りに来てくれたんだって。
朝早くからありがとう!
今度我が家のお披露目会をすることになると思うので、その時は王様もモッカ団長もぜひぜひ遊びに来てね!
「そして、個人的ではありますが、次回は我が家にも遊びに来てください」
「我が家も大歓迎です。ぜひ来てくださいね、師匠。ミムミムも来て。次回会った時はもっと深く魔法談義しましょう」
「うん。ぜひ。アレ、試してみる」
「ええ、待っているわ」
ありがとう、モッカ団長、ピリカお姉さん。
また来るね。あ、弟子はとらないからね。
と言うか、ミムミムお姉さんとピリカお姉さん。もっと深く魔法談義って、いつそんな話をしたんだろうか?
アレってなに?ドキドキ…。
「ゆき様。有意義な時間をありがとうございました。またいつかご一緒したいです」
「美味しいものをありがとうございました。次回は私共も協力させていただきます」
うん。なにかする時は声をかけるね。
お肉がいっぱいあるからまたバーベキューをしよう!
ありがとう、ヴィーサスさん、ルオカさん。
じゃあ、またね。
「バッバーイ!」
手を振りながら歩き出す。…私はレーヴァ抱っこだけれど。
「バッバーイ!」
「またいらしてくださいねー!」
「あーい!」
ありがとう、ロストロニアンの皆さん。
楽しかったよー!
王都から離れるまで少し歩く。
桜吹雪号を出すところは見られたくないからね。
「このまま歩いて行くのですか?」
「いいえ。移動手段はありますが、あまり人に見られたくないので」
「何を見せてくれるのか楽しみだの。ねえ、旦那様」
ヴァロさんもルーチェさんも日頃から鍛えているから歩くことは苦にならないらしい。二人とも軽やかな足取りで私達と共に歩く。
「これだけ離れりゃ大丈夫だろ」
氷華が辺りを見回す。私も地図を確認した。
人もいないし、特に問題ないみたい。
「じゃあ、出す」
「動かないでくれ」
鳳蝶丸とミルニルが桜吹雪一号と二号を出す。
中が見えない結界付きだけれど、皆魔法契約済みだから桜吹雪号が見えるはず。
「こっ、これは何ですか?」
「鉄の固まりかや?」
いえ、金剛鋼鉱石と魔石の固まりです。
「馬のいない馬車とでも思ってくれ」
「馬のいない馬車……」
「とにかく乗車してくれ。座り方は説明してくれるか?」
「わかりました」
早く出発したいので、今日は飛び出せGO!を待たない予定。
安全だと証明するためフィガロギルマスが乗車しようとすると、ヴァロさんが止める。ピメイスさんがピクリと反応したけれど、ヴァロさんが手で制す。
「かまわぬ。ゆき様の持ち物じゃ。危険など無い」
そう言って躊躇なく一号車に乗り、大喜びでルーチェさんを呼ぶ。
「凄い!旦那様、早う!」
「ああ、わかった………な、広いっ!」
空間操作先生が素晴らしい作品に仕上げました。
ウフフ♪
「こちら以外の席に座るんですが、どうしますか?」
「無論ここじゃ!」
フィガロギルマスが運転席以外だよと案内したら、運転席の斜め後を指定するヴァロさん。
フィガロギルマスも運転席斜め後の席が好きだよね。親子だなあ。
乗車グループが大体決まる。
桜吹雪一号車はフィガロギルマス、ルーチェさんとヴァロさん、ピメイスさん、精鋭達。二号車は残りの人々に分かれることになった。
一号車の運転手はハルパ。ミスティル、レーヴァ、私が同乗。
二号車の運転手は氷華。ミルニル、鳳蝶丸が同乗です。
私は助手席のレーヴァ抱っこだよ。
「では、しゅっぱーちゅ!」
まずはヴァーヘテラ地方に向け出発です!
しばらく山々と並行して裾野を走る。
「早馬よりも早い。いや、まるで飛んでいるようじゃ」
ヴァロさんが窓側に座り、かぶりつきで外を眺めている。
「山に沿って大回りをしても、通常より早く着きそうだね、ヴァロ」
「はい、旦那様」
「馬移動でも一週間、魔獣襲撃を考慮すれば二週間はかかるはずです。この『サクラフブキ号』では何日くらいで到着するのでしょうか?」
「この速さじゃと、野営四泊くらい、いや三泊ほどか?」
「急げば今日中に着くよ。姫の睡眠時間を考えると一泊になると思うけどね」
「は?」
レーヴァの説明にゼッテンシュート家一同が固まる。
「こにょ、あたい?」
「そうですね」
その間も地図を確認しながら走る。
何とかなりそうな場所を見つけたのでハルパに地図を見せ、この辺りは?と言うと、行けそうですと頷いた。
「氷華、聞こえますか?」
『おう、そろそろか?』
まずはハルパがワイヤレス通信で氷華に連絡。
次に車内スピーカーでこれからの予定を簡単に説明した。
「それほど揺れないと思いますが、シートベルトを締めてください。このまま山越えをします」
「えっっっ!」
「山越え?」
ヴァーヘテラ地方は山の向こうにあり、通常は何日もかけて裾野をグルリと回り込む。山道は大変厳しく、山頂付近には凶暴な魔獣が多いからと言うのが理由だそう。
でも桜吹雪号なら全く問題ない。
結界の上を走るし、岩などゴツゴツした物を越えたい時は結界がスロープ状に変化するからね。
「この辺りで山に入ります」
『りょーかいっ』
ハルパがワイヤレス通信で氷華と連絡を取り合い、助手席にいる私の地図を見ながら道も何もない緩やかな上り坂へとハンドルを切った。
「ほ、本当に入った」
「正気か」
精鋭達が少しざわつく。
「全く揺れぬ。何故じゃ」
「車高が高いように感じるけれど、どうなっているのだろうか」
桜吹雪号はひたすら山を登って行く。
草木ある景色から、だんだんと岩や大粒の砂利の景色に変化している。
途中チラホラと魔獣が姿を見せるけれど、車の結界に隠匿と気配遮断がかけられているので気が付かれず襲ってくることはない。
「大きな岩があります。問題ないのでシートベルトを外さず立ち上がらないでください」
「あの大岩を越えるつもりかや?どうやって?」
「ん?緩やかに上昇していますね」
スロープ状の結界が張られ、問題なく岩を越える。その先のゴツゴツした岩部分も、車体が少し上下するくらいで問題なく進み、スムーズに山を上がって行った。
うん、順調、順調!
山頂付近で三十分ほど休憩することになった。
「結界に守られているので魔獣に攻撃されることはありません。ただし結界外に出ないように」
まずは私とレーヴァで外に出る。車体にかかる結界内なので魔獣達に気付かれることはない。
二号車を一号車のギリギリまで近付けて、結界同士を連結魔法で繫げる。
結界4(平面)を地面に張って平らにし、車を結界の上へ移動してもらう。
エンジン停止すると、車体下の結界は一度解除されるので、車が傾く可能性があるからね。
次に大きい結界1で車と休憩場所を囲う。結界1にも隠匿と気配遮断を付与したから魔獣に気が付かれることはない。
頂上に近い場所なのでそのままだと空気が薄く、気温や気圧の関係で具合が悪くなるかもしれない。でも結界1の中は快適空間なので、結界内であれば皆が外に出ても問題ないからね。
でもうっかり外に出ないよう、念のため床結界の色を少しだけ暗っぽくしておいたよ。この結界の外には出ないでね。
「ありがとな、姫さん」
「おう、お疲れ」
「ありがと。主さん」
二号車組の鳳蝶丸達も、外に出てきてテーブルやイスの用意をし始める。
「お茶と軽食にします。足元の結界に少し色が付いているのでその範囲は超えないように」
「結界外は空気が薄い。具合が悪くなる可能性もあっから、ここから出んなよ」
ハルパと氷華の案内で、周りを気にしつつ皆が車から出てくる。
「席について」
ミルニルが着席を促し、ピメイスさんと精鋭達以外が座ったところで、鳳蝶丸とミスティルがお茶とサンドイッチを出した。
「おたわい、あゆ」
「おかわりもあるから沢山食べて、と姫が言っているよ」
「いや、うん。ありがとう、ゆき様」
「すみません。理解が追いつかなくて…」
ヴァロさんとルーチェさんが神妙な面持ちで周りを見渡す。
結界の外は、岩ゴーレムの群れがゴウンゴウンと闊歩している。
そんな中でお茶休憩と洒落込むよ!
あれ?皆無言でどうしたの?結界があるからだいじょぶ、ダイジョブ!
本作をお読みくださり、☆評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。
とっても嬉しいです♪
誤字報告も大変助かっております。いつもありがとうございます。




