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黒真は、紫雨氷雨と言う機械の女性との出会いに運命じみたものを感じていた。これは、嘘ではない。それは、未来と言う先のことを知った上で、この氷雨に出会ったことだ。未来を知れば回避できると黒真は考えていた。例えば、三年後、落ちてきた鉄柱に貫かれて死ぬことを知って、それを回避したとしても、別の何かに遭って死ぬ。それが歴史の矯正力だ。
歴史の道筋、因果律と言うものは、あらかじめ決まっている。それを変える事は誰にもできない。ただ、二つの例外を除いて。
【誓約の杜】【リストリクティクト・チェーン】。誓約を交わすことにより、因果を改変する【霊力】。
イヴリアが求めてやまない能力。八本目の【聖剣】を封ずるために必要な能力だ。
ただ、その【誓約の杜】でも改変できないことはある。歴史の変革点、世界を動かす上で欠かせない事象だ。
黒真と氷雨の出会い。これは、決められたものでありながら、決まっていないものだ。もし、黒真が、氷雨に逢う前に、氷雨と会わないことを誓約していたならば、黒真と氷雨が出会うことは無かった。
「紫藤君は、【誓約の杜】を使えるんですか?」
フューゼの純粋な問い。それに、黒真は、何故と問うような視線でフューゼを見た。
「イヴリア様は、それを必要としているんです。決められた未来を失くすために。世界の消失を防ぐために」
大げさではなく、それがイヴリアの願っていることなのだ。
「世界の消失、比喩ではないんだな」
黒真は、チラリとエネルギー充電のためにスリープモードになっている氷雨を横目で見てからフューゼに聞いた。
「ええ、比喩などではなく、事実です。あれが、この世に存在していれば、いずれ、世界が消失します」
フューゼの真剣な物言いに、黒真が息を呑んだ。
「あれって言うのは何だ?」
そう静かに問う。フューゼもまた、静かに言った。
「【時空の剣】」
それは、嘗て、いや、今も、だが、【輪廻】の一族にのみ使うことの許された力。ただ、イヴリアは創造できたのだ。
そう、七本の聖剣が七つの世界を表しているとしたら、【時空の剣】は、世界が存在している空間そのものを指す。その【科力】こそ、世界を壊すことなど容易い力。
【輪廻の果ての燐音】。その力こそ、因果の崩壊を招く力。
「時空……?」
黒真の疑念の声に、フューゼが即答する。
「正確には輪廻。輪廻転生などの輪廻です。その力は、確実に何者かが利用して、世界を崩壊させます。それは、フューゼ様が、そう想像してしまったから」
【創造されし想像】は、想像したものを具現化する科力。それゆえに、想像してしまった時点で、それによって生じる事象を改変することは不可能。
【龍滅の剣】。強き力を想像し創造された。
【切断の剣】。絶対的力を想像し創造された。
【太陽の剣】。明るき未来を想像し創造された。
【堕ちた烙印の剱】。暗き絶望を想像し創造された。
【黄金の剣】。輝かし幻想を想像し創造された。
【慈悲の剣】。優しき心を想像し創造された。
【選定の剣】。完璧な人間を求め想像し創造された。
【時空の剣】。世界の崩壊を想像し創造された。
これらの剣が、今、この地球に存在している。そして、それらが使われだした。最後の剣も、いずれ使われるのだろう。
だからこそ、それを避けるために、【誓約の杜】の力が欲しいのだ。
「それを止めるために、紫藤君、力を貸してくれませんか?」
「ああ、それは構わないが、」
そこで黒真の言葉は止まってしまった。それと同時に響く轟音。
「ッ?!」
フューゼが慌てて、窓の外を見やった。
◇◇◇◇◇◇
地球、エスサイシア大使館地下大聖堂。そこには、青と言う表現があまり似つかわしくない藍色の髪をした一人の青年がいた。青年は同盟学園の制服に身を包み、学生らしからぬ不敵な笑みを浮かべていた。日本人ではないその風貌は、エスサイシア出身だと分かる。その名前をガリュー・ファンステイン。ガリューこそ、同盟学園生徒会長だ。沖縄にいる、と言うのは名目上の嘘だった。彼は、日本に眠ると言う八本目の剣を探し、日本を守ると言う名目で日本中を旅していた。まあ、北海道などには行っていない。なぜなら、フューゼの行った土地にあると考えていたからだ。そして、ようやくたどり着いた。そこに、八本目の剣はあった。
「これが……、八本目……?!」
ガリューは驚きを隠せない。その禍々しさ。黒い柄に埋め込められた赤い宝石。緑の刀身が黒々と光る。その禍々しさは、逆に神々しくも思える。
「フフッ」
不敵な笑いが、不気味な笑いに変わった。
「これは、凄い……。力が、湧き上がるようだ」
そして、剣掴む。
――ゴゥウウウウウウン!
そして、轟音が世界に鳴り響いた。
世界の位相が歪み始める。




