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第8話 仮面が落ちて、素顔が世界を灼く

突如翠くんがオレの元へ駆け出してきた。

突然の出来事だったためオレは体を突き飛ばされた。

その後すぐ自分の顔に生暖かいものが付着した。


「皆さん、体勢を低くして伏せて!!」


翠くんの緊迫した声にロビーにいる人々も困惑しながら指示に従っていた。

そして、皆の視線が彼に集《あつま》る。


──仮面(帽子)が、落ちた。


先程までは帽子を被っていて顔が認識できていなかったが、今は帽子がなく彼の素顔がハッキリと認識できる。


髪は艷やかな癖のない腰辺りまである長い蒼黒髪。

整った中性的な顔立ち。

そして半透明の深い緑色をした美しい瞳。

幼さの残る可憐な面持ちがありつつ、凛とした気品が感じられる存在感。

100人中100人が【美しい】と答えるような子どもが目の前に現れた。


その場にいる全員の視線が彼の存在に吸い込まれる。

誰も、何も言えなかった。


「翠くん、君は……女の子……??」


「私は男です!!!」


『嘘でしょ!?』

この場にいる全員が思った──。


「ちゃんと下も付いてます!!!」


顔を赤らめ恥じらいながらそう答えた彼を見て、誰かがぼそっと呟く。


「……可愛い……」


その一言に、緊迫した現場の空気が一瞬だけ緩んだ。


「今はそれどころじゃなくて! 敵襲です! 相手は銃を所持し、離れた場所の物陰から狙ってきているスナイパーです。狙われたのはお兄さんです!」


「えっ!? てか、翠くん肩から血が!!」


「さっきちょっと掠めちゃいましたが問題ありません。」


そう答えたが、状況的には非常にまずい。

相手はプロだ。

銃声は聞こえなかった。サイレンサー付きの銃を携帯していると考えられる。

お兄さんを狙ったって事は『荷物配達』の雇用主関係の人間だろう。

恐らくこれまでも陰ながら配達員の動向を監視していて、何かしらのミスなどがあれば迅速に対処する役割の者なのだろう。

お兄さんの話から『裏社会』が関わっていると考察はしていたが、その場で実力行使までしてくるとは。アタッシュケースの中身は、相当ヤバイモノだったんだなぁと今更ながら思う……。


お兄さん以外にも周りにこれだけ人が居るなかで発砲してきたということは、配達員を最優先で排除し、周りに知られることも厭わず、関わった人間ごと処理する気だ。


私1人で何とか対処出来なくもないが、個人的な理由でこれ以上目立つのは非常に良くない!!!

お兄さんを助けるために認識阻害の帽子を飛ばされたのが痛い……。

もしこの顔が"あちら側"に知られたら──そう考えるだけで、背筋が冷えた。

この状況は、私一人で対処するには、あまりにも荷が重いと判断せざるを得なかった。


そもそも私は1人でこの商業施設に来たわけではない。

お世話係兼護衛のポンコツメイドが迷子(行方不明)になったことが事の発端である!

私自身が迷子になったわけでは決してない……。


色々と頭の中で考察していると再び赤い点がお兄さんの体に照射され、それとは別にもう1つ赤い点が目視できた。

先程は1つだったが今回は2つ照射されている。

そして銃弾を目視。

手に魔力を纏わせお兄さんに向けて放たれた1つ目の銃弾を迎撃することに成功するが、続けて発砲された銃弾は迷子仲間の弥生ちゃんに向けられていた。


弥生ちゃんに。

間に合わない。

それでも、私は──。


そう思い一瞬の迷いを後悔し彼女に迫る銃弾を視認しつつ、身体の底から魔力を解放しようとした瞬間、風を切る音とともに2つの影が舞い降りた。


1人は少年側に、もう1人は少女側に着地すると同時に、華麗に銃弾を迎撃した。

墨色の髪の乙女と、若葉色の髪をした乙女──2人が颯爽と現れた。


「桔梗さん!」

翠がその名を叫ぶ。


「菊乃!」

弥生も同時に声を上げた。

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