第7話 安らぎの仮面、次の凶弾に砕ける
気が付くと、元の場所に戻っていた……。
目の前には帽子を深く被った子ども、翠くんが居る。
どうやら、本当に戻ってきたらしい。
先程の出来事は本当だったのか、そう疑問に思いつつ彼を見ていると、目が合い、こちらに向かって笑みを浮かべながらウインクをしてきた。
そのやり取りはオレにしか見えないようにされた行動であり、先程の空間でのやり取りが現実だったと認識出来た。
「お兄さん、まずはその銃を下ろしてくれませんか?」
「あ……あぁ、すまない。」
「ありがとうございます。お兄さんはこれからどうなさるおつもりでしょうか?」
「オレはこれから自首するよ。」
そう言うと男は、今度は周囲に向き直り、深く頭を下げた。
「皆さん、このたびは私のせいでご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。。私はこれ以上何かをするつもりはありません。このまま警察が来るまで大人しくこの場で待機します。誰か110番と119番をお願いできますでしょうか?」
■翠視点■
突如拳銃を持った男が自首と謝罪を伝えてきて、周りの人達は困惑する状況だが、私が近くの男性に
「お電話をお願いしても宜しいでしょうか。」
とお願いすると状況は動き出し、周りの人達も困惑しながらも安堵し時が動き出した。
現場の張り詰めた空気が、少しずつほどけていくのが分かった。あとは警察の到着を待つだけ──そう思っていたのだが……。
私は念のため撃たれた男性の元に近づき応急手当をしようと声をかけると
「遅ぇんだよ!!! 糞が。俺は撃たれたんだよ早く助けろよ!!!」
と泣き叫びながら罵詈雑言を言ってきた。
その言動に周りの人達は唖然とし、私以外にも男を手当しようと近づいてきた人達は足を止めた。
言葉には出さないがこの場にいる全員が思っただろう──。
『コイツを助ける必要があるのか!?』と……。
不意に私はお兄さんの方を見た。
あんな暴言を吐いた元上司に対して、お兄さんが何か行動を起こさないか心配に思ったから……。
お兄さんはその場に留まり哀れみの目で元上司を見ていた。
『良かった……。』
と思ったのも束の間、お兄さんの胸の辺りに赤い点が照らされているのに気が付く。
──狙撃。
そう理解するよりも早く、身体が動いていた。まさか、これもあの組織の……?
その疑問を考える暇さえなく、私はお兄さんの元へと駆けた!
その赤い点が何なのか瞬時に理解できたから──。
お兄さんの目が、驚愕に見開かれるのが見えた。
世界の音が、一瞬すっと消えた。
次の瞬間、鮮血と帽子が舞った──。




