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第5話 剥がれかけた日常、引き金を引く指

■犯人視点(回想)■


あれから3ヶ月──。

オレはあの怪しい求人の仕事で生計を立てていた。

初回の仕事の際は、荷物の受けとり場所が余りにも怪しい裏路地の古ビルだったため、足を踏み入れるか悩んだが、生活や金銭事情もあり恐る恐る建物の中に入ることにした。


ビルの中は人の気配は無いものの、内装はキレイで電気も通っていた。

そして指定の場所に着くと人は居らず、テーブルの上にアタッシュケースが置かれており、それを指定の場所まで届けると翌日には口座にお金が入金されていた。


仕事のやり取りは専用のアプリで全て完結し、今のところ自分以外の人と会うことも無いのでストレスフリーで配達の仕事に取り組めた。

何より報酬も良いため、怪しいと思いつつこの仕事を続けていた。


そして転機が訪れる──。

荷物配達の仕事にも慣れ、いつものように荷物の受け渡し指定場所へと向かう途中で人とぶつかってしまい、床にアタッシュケースを落としてしまった。


『しまった……。』


ガチャッ!


そして運悪くケースのロックがハズレてしまい、ケースの中身を目にしてしまった。

今まで一度もケースの中身を見たことはなく、これからも見ないようにしようと自分の心の中で誓っていたのだが、オレはその中身を見てしまった……。

ケースの中には黒い銃が入っていた。


『本物なのか……!?』


一瞬、思考が止まった。

そう思いつつオレは急いでアタッシュケースに駆け寄り、蓋を閉じた。

アタッシュケースが落ちた場所は奇跡的に物陰になっており、周りの人達には見られずに済んだと思う。

頭がパニック状態の中で不意に声をかけられる。


「おおおぉぃっ! お前どこ見て歩いてんだよっ!!!」


気付くと先程ぶつかった男性がオレの近くまで来て文句を言ってきた。

『面倒くさい……』と思いながらアタッシュケースを拾い、謝ろうと思い顔をあげると、オレの思考はフリーズした。

そして一気に憎悪の感情がオレの心を支配した。

オレの目の前で文句を言ってきた男は、前の会社を辞める原因になったクソったれな上司本人だったからである!


《プツン!》


その瞬間、理性が弾け、キレる音がしたのが自分でも分かった。

気が付けばオレはアタッシュケースから銃を取り出し、上に向けて引き金を引いた。

感情は煮えたぎっていたが、頭の一部は冷静だったらしい。

衝動的な行動ではあったが、根底には銃が本物かどうかを確かめる狙いがあった。

引き金を引いた瞬間、この銃が本物だと実感できた。

撃った瞬間、手と体に鋭い衝撃と痛みが走り、天井に穴が空いていたからである。


さっきまで罵詈雑言を言っていた目の前の男は口を開けたまま静かになっており、その表情からは困惑と恐怖の色を浮かべているのが分かった。


……いい気味だ。


そう思った瞬間、オレの中で何かがさらに壊れた。


そしてオレは次の行動を起こす!


「ざまつけ……躓けぇぇぇー!!!!!!」

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