第2話 10歳の仮面の下、覗く修羅場慣れ
まずはこの場の状況整理から。
床に伏せた人々の荒い息遣い、遠くで鳴り響く誰かのスマートフォンの着信音、そして噴水の水音だけが、やけに大きく聞こえる。
銃器を持った男が1人。
男に気取られないように目線を動かしながら周りを観察するが仲間は見当たらない為、現状は単独犯であると推定。
男の行動を思い返してみると、銃を2回に分けて発砲している。
1発目は天井に向かって……。
2発目は男性に向けて……。
男の一部始終を見ていたわけではないが、これは《プロ》の犯行とは到底思えなかった。
なぜなら銃を手に持った男は逃げるのでもなく人質を取って立て籠るのでもなく、今もこの場に留まり次に何をして良いか分からないと困惑した表情で挙動不審の様子なのだから。
そして撃たれて負傷した男性。
撃たれた箇所は大腿部(太もも)で、苦しそうにその部分を押さえながら呻いている。
太ももには大腿動脈という太い血管が通っている。もしそこが損傷していれば、大量出血によって命を落とす危険がある。
一刻も早く、出血を抑えなければならない。
──時間がない。
一分一秒が、彼の命を左右する。
一刻も早く、この状況を打開しなければならない。
最後にこの場に残された人達。
私も含め10名程。
その中で成人男性が2人。残りは女性と子ども。
商業施設には至る所に防犯カメラが設置されているためこの状況は管理室にも伝わっており警察等に通報はしていると思われるが、警察官や救急隊の到着を待っている時間はない……。
撃たれた男性の出血量を考慮すると、警察等の到着を待っていると恐らく助からないと思われる。
何故子どもである私がこの危機的状況の中、冷静に周りを観察し人体や建物の構造を知っているかというと、私の見た目と中身が伴っていないのが要因である。
簡潔に言うと身体は子ども、頭脳は大人な訳あり特異転移者なのだ。
今の体は小学5年生(10歳)の私。
今も昔も生まれも育ちも日本であり、異世界にて人生を絶賛謳歌中なのだが……。
過去のお話はおいおいするとして、まずはこの危機的状況を何とかしなくては……。
指先が、微かに震えていることに気づく。
恐怖からくるものなのか、それとも──分析を急ぐ焦りからくるものなのか、自分でも判別がつかなかった。
けれど、震える指先とは裏腹に、頭の中だけは奇妙なほど冴えていた。
『きばらんないかんね!』
私は心のなかでそう呟きつつ気持ちを切り替え、この状況を打開するために行動を起こそうと思う。
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