第15話 名乗る勇気、注がれる視線
「あっ、あの、もしかしたら、その男性を助けることができるかもしれません……」
思わず声が裏返った……。
先ほどまで二人の男女に注がれていた視線が、一斉に私へと向けられた。
「私は高野山陵と申します。あなた方は、青水終さんと雪さんでお間違いないでしょうか?」
「はい、そうですが……。あなたは……? 先ほどおっしゃった言葉は、本当でしょうか?」
彼女は私を怪しみながらも、返答してくれた。そして、希望を込めた瞳で私をじっと見つめてくる。
『綺麗だなぁ……!』
目の前の彼女を見て、私は改めてそう思った……。
艶やかで癖のない長い蒼黒髪に、可憐な美貌。はっきりとした目鼻立ちに、清楚な雰囲気の中にも隠しきれない色香を漂わせる美少女が、目の前にいる。
そんな彼女は、悲痛な面持ちで終を抱き締めていた。そして、突如として目の前に現れた怪しげな男に、わずかな希望を見いだそうとしている……。
彼女の声は震えていた。その震えが寒さによるものではないことは、すぐに分かった。
「私は……」
「雪、下がって!!」
私が言葉を発しかけた瞬間、赤髪と黄髪の二人の女性が、私と雪の間に立ちはだかった……。
彼女たちは終と雪の仲間であり、かけがえのない友人たちだ。いきなり見ず知らずの男が現れ、「あなたたちを助ける」と言い出せば、不審に思うのも当然だろう……。
「李花、杏。大丈夫だから、下がって……」
「でも!」
「いいから、下がりなさい! あなたたちには、この状況をどうにかできるの? 終さんを助けることができるの? 私には、もうこれ以上、手の施しようがないわ……。そんな状況で、このお方は『助けることができるかもしれない』とおっしゃってくださいました。なら私は、このお方のお話を聞いてみたいと思います!」
雪は悲痛な思いを込めて叫んだ。
助けられる可能性が少しでもあるのなら……。そんな、藁にもすがる思いで、彼女は言葉を紡いだ。
「ごめん……」
「ごめんなさい……」
二人は謝罪し、引き下がった。
けれど、赤髪の李花さんだけは、立ち去り際にもう一度だけ私を振り返った。
警戒しているとも、何かを探っているとも取れる、鋭い一瞥だった。
「……あんた、どこかで会ったことある……?」
「……いえ、初対面のはずです」
私がそう答えると、李花さんは小さく首を傾げ、それ以上は何も言わずに離れていった。
私はそのやり取りを見守った後、改めて口を開いた。
「時間がないため、私の事情は省かせてもらいます。それでも、どうか信じてください! 私は、あなたたちを心から助けたい! なぜなら、あなたたちは私の《推し》だから!!」
「……………」
『あー、やらかしたぁー』
最後に余計なことを言ってしまい、その場の空気を凍りつかせてしまった……。




