↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救国の最強S級探索者、普通を目指して学生生活を送っていたらアイドル配信者の配信にうっかり映り込み大バスしてしまう  作者: 夕影草 一葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

9話

 第六異特級ダンジョンの最下層付近。

 順調に攻略が進んでいた矢先、如月のポケットで電子音が鳴り響いた。

 慌てて取り出した如月はその表示を確認して、声を上げた。


「ま、待って! 三隈君!」


「どうした?」


「で、電話がかかってきたの! お母さんから!」


 震える手でスマホを見つめる彼女に、俺は冷静に促した。


「出てみろ。なにか掴めるかもしれない」


「わ、わかった! も、もしもし?」


『た、助けて! お父さん、どこに行ったの!? ジュリは……ジュリはどこ!?』


 スピーカーから漏れ聞こえたのは、半狂乱になった女性の悲鳴だった。


「落ち着いて、お母さん! わたしだよ、ジュリだよ! どうしたの!? いま、どこにいるの!?」


『助けて、助けて! どこなの、ここ! お願い、誰か――』


「ねぇ、お母さん!」


 通話は唐突に切断された。

 青ざめるジュリを見て、俺は短く息を吐いた。


「急ごう。最下層に向かえば、答えが見つかるはずだ」


 ◆


 最下層の大空洞に辿り着いた俺たちは、異様な光景を前に足を止めた。

 巨大な花弁のような肉塊が蠢き、その中心から「何か」が突き出ている。


「如月、配信を付けられるか?」


「え……? も、もちろんだけど、どうして?」


「集合知が必要だ。あのモンスターは俺も見たことがない。どんな行動をしてくるかわからない以上、背に腹は代えられない」


 深層のイレギュラー。

 未知の脅威を前に、油断するつもりはない。


「でも、配信を付けたら三隈君も映っちゃうよ?」


「その時はその時だ。それにあのモンスターが、どういった行動をしてくるか、わかるだけでいい」


「わ、分かった。すぐに準備するからちょっと待ってて」


 ジュリがドローンを起動しようと背を向けた、その時だった。


「大地」


 俺の心臓が、ドクンと跳ねた。

 その声は、真っ直ぐに俺の鼓膜を打った。

 聞き間違えることはない。

 それは、死んだはずの母親の声だった。


 ◆


「三隈君! これで配信が付いたよ!」


 セッティングが終わると同時に、ドローンが宙に舞い上がる。

 何度も繰り返した動作だ、さほど時間はかからない。

 だが、その直後。


「ジュリ、ジュリ」


 声を受けて顔を上げれば、そこは真っ白な空間だった。

 振り返れば、電話の向こうで聞いた声が響き渡る。

 視線の先には、もう二度とみられないと思っていた姿があった。


「その声……お母さん? ほんとにお母さんなの!?」


「やっと、やっと来てくれたのね。もう、誰も来てくれないんじゃないかって、不安だったの」


 信じられなかった。

 だが目の前の母は涙を流して両手を広げていた。

 まるで再会を喜ぶかのように。

 まるで抱擁を求めるかのように。

 ゆっくりと近づき、そして確信する。


「生きてたの……? ずっと、私を呼んでいたの?」


「えぇ、そうよ。ジュリ、もっとこっちに来て、その顔をよく見せて」


「お母さん、おかえり――」


 その瞬間。

 なにかに首を掴まれ、そして視界は激しく入れ替わった。

 装備のおかげで怪我はないが、受け身を取って顔を上げれば同行者の三隈が、母の前に立ちふさがっていた。


「目を覚ませ、如月」


「な、にを……」


「はっきりと見てみろ。あれが、お前の母親なのか?」


 激しい衝撃で回る視界が、徐々に元通りになり始める。

 そして母が立っていた場所にいたのは――


「なに、あれ……」


 腰から下が存在せず、太い触手のような管で肉塊と繋がった女性の体。

 その顔は、複数の人間のパーツを継ぎ接ぎしたような歪な作り物だった。


 ◆


『うわぁぁぁぁ! 何だこれ!?』

『グロすぎる! 吐きそう!』

『アルラウネの亜種じゃない!?』

『ジュリちゃん逃げて!!』

『あいつ、人間の声を真似てるぞ!?』


 仮想スクリーンに流れていくコメントを眺めて、いくつか有用そうな物を見つけることもできた。


「なるほど、形状は違うが特性を見るに、アルラウネの一種とも言えるか」


 元々は花弁の内側に隠れており、捕食の際にのみ姿を現すモンスターだ。

 華をモチーフにしているだけあり、花粉を吸いこむと幻覚や毒といった状態異常を引き起こす。


「コイツのモチーフは食虫植物。あの疑似餌を使って人間を……探索者を誘いこむ。そして相手の過去の事象を具現化する。これが、メッセージの正体か」


 五年前に犠牲になった人間の記憶や通信端末を、この化け物が取り込んで利用していたのだ。

 だから如月の端末に、メッセージが送られてきたのだろう。

 魔力濃度が高まり、その能力の範囲がダンジョンの外まで広まったことで。


「そんな、お母さんが……」


 事実と絶望に打ちひしがれ、如月が床に泣き崩れる。

 俺は、その前に静かに立ち塞がった。


「立て、如月」


 あの化け物は、俺の母親の声まで騙った。

 万死に値する。


「母親を冒涜した相手に、殺されてやるつもりか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。