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エンシャント・クルーレ② ー『花』の章。冷徹イケメン最強騎士は実の妹である私にだけはデレデレ!? 幸せ宮廷生活に魔導女学院でほのぼの日常オホホホホ!!ー  作者: 藤村 樹
錬金術師と命の滴

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煌めく閃光

 私はコットリカの追撃の手から逃れ、採掘場のかなり上層まで昇ってきていた。

 大地下洞穴の天井近くまで迫っており、街のほうに目を向ければ街の全体像が見渡せるほどだわ。


「よし、これだけ高低差があれば……」


 アクァークを召喚して魔力発動させるだけの時間的余地はじゅうぶんにあるし、高低差を使った威力アップも得られる。

 そうして私が『召喚』スキルを発動しようとしたとき……。


魂珀(こんはく)のピアス』から映像が投影され、なじみの声が聞こえてきた。

 ただ、その声は今までにないほどに緊迫していた。


『サヤ、メルサが危ないわ。援護しなさい!』

「え、メルサ? どこ!?」

『街の中央の高台。ノハナのおじいちゃんの家の近くよ!』


 そう言われて、私は再び街のほうへと目を向けた。

 コットリカとの戦いに気を取られて気付かなかったけど、いつの間にか街のはずれのほうではクレーターみたいな窪地ができあがってる。

 底には溶岩溜まりと、緑や紫の沼とが混じりあっていて、毒々しい煙が立ちあがっている。

 いったい何が起こっているというのかしら。


 そして、街の中心部ーーあそこだ。

 ケーキに群がる蟻みたいに、高台に一斉にゾンビが押し寄せていってるからすぐに分かった。

 

 そのとき、私の体に見たことのない魔方陣が浮かびあがった。

 来た来た、新たな『必要性』。

 まだ見ぬ召喚獣との出会いだ、この瞬間の胸の高まりは何回経験しても堪らないわ!


「煌めけ、『ゼトレルミエル』!!」

「ピピピュン、ピュンピュン!」


 ポン、と出てきたのは宙を飛ぶ光の玉。

 手のコブシくらいの大きさ。

 真ん中に黒い、つぶらなおめめがふたつ。


 ちっちゃい。かわいい。

 マ○オのスターみたい。


 ……でも、分かる。

 この召喚獣には、とてつもない力が秘められているのだということを。

 小さな体の深奥に、弾けて世界じゅうを照らしてしまいそうなほどの光が湛えられているのが伝わってくるから。


 これぞ世界にあまねく光の神、『ゼトレルミエル』!!


 私がどうすればいいのかは、体が自然に理解している。

 私は鉄骨の足場で両足を広げ、腰を低くどっしりと構えた。

 左手は右腕をつかんで支え、右手をまっすぐに伸ばすと、ゼトレルミエルがすっぽりと手のひらに収まった。


『細かい照準はゼトレルミエルが自動で合わせてくれるわ。あなたはとにかく魔力を込めることに集中しなさい、サヤ!』

「うん。分かったわ、ヒヅキちゃん!」


 伸ばした右腕を通じて、ギュンギュンギュンとエネルギーが上昇していくのが伝わってくる。

 ビカビカにまぶしくって、目をあけていられないほどだわ。

 そしてエネルギーがMAXまで高まったことを確認し……。


「射ちぬいて、ゼトレルミエルッ!!」

「ピューンッ!」


 ゼトレルミエルは私の手のひらから射ちだされた。

 凄まじい光と反動。

 まるで『超電○砲(レールガン)』を撃ったかのような手応えだわ。


 でも、その射程距離がハンパない。

 ここから街の中心まではゆうに数kmはあるけど、まったく威力が減衰する様子がない。


 ゼトレルミエルは光の筋を残して、まっすぐにメルサのもとへと飛んでいったーー。


 メルサに無数のアンデッドたちが飛びかかり、勝負が決しようとした、そのときであった。


「「ッ!!?」」


 幾重もの光の筋が現れ、瞬時にして全てのアンデッドを射ちぬき、さらにリブの太く肥大した右腕をも根元で断ち切った。


 ……いや、違う。

 幾重もの光の筋ではなく、1本の光線が幾重にも反射し、往復してできた道筋なのだ。


 パルレマイン特有の、地から生える魔鉱石。

 光の玉はこれらの魔鉱石に反射し、思い通りの軌道を描いた。

 さらに、反射するたびに魔鉱石の魔力を回収し、威力を増強させながら。


 メルサはその光の道筋を、現実離れしたような不思議な感覚で見つめていた。


 ーーサヤ……!?


 どの魔法とも違う、この感覚。

 でも、この感覚は前にも感じたことがある。

 サヤが、『召喚』スキルで自分を守ってくれたときの感覚にそっくりだ。


 あたたかい。まぶしい。

 サヤの存在を近くに感じたことが、彼女に何よりも強い力を与えてくれた。

 メルサは必死に剣を握りしめ、ゾンビ化が進んで力が入りづらくなった腕に再び力が込められる。


 だが、まさしくそのとき、ミスリル・ソードにかかっていた強化効果が切れようとしていた。

 刀身の輝きがうすれ、ダークアメジストを破壊するだけの威力が失われていく。


 ーークソ! あともう少しだってのに……!


 リブもまた、封じられていた右腕の束縛から解放され、背中の衝撃による硬直から回復していることに気付く。

 振りかえり、残されていた左腕の爪でメルサを斬り殺そうとした。

 しかしーー


最高サイッコーに燃えてるぜ、お嬢さん!! サービスだ、もひとつおまけにくれてやるぜぇっ!!!」

「「ッ!!?」」


 一流の鍛冶職人、シド=ウィステリア。

 武器の声が聞こえる彼は、自身が打ちこんだ『熱魂ハンマー』の効果が切れかかっていることを、いち早く察知していたのだ。

 だからこそ、リブの右腕が断ち切れた瞬間、彼はメルサのもとへと駆けだすことができた。

 その判断の早さのわずかな差が、勝敗を分かつこととなる。


熱魂ソウルフルハンマー』!!!

 

 思いきり振りぬかれたハンマーにより、再びメルサの剣は再び輝きを取り戻すこととなる。

 スイングの勢い自体も加わり、剣の刀身がさらに押しこまれた。

 

「そのまま行けぇッ、お嬢さん!!」

「!! うおおおおおおおおっ!!」


 そうして、ダークアメジストの先端にヒビが入った。

 崩壊は止まらず、ヒビが広がり、ダークアメジストが砕け散る。

 その勢いのまま、リブの胴体は切断された。


 胴で切断された上半身が、宙でグルグルと回転しながら跳ね飛ばされていく。

 めまぐるしく、上下に回っていく世界。

 痛みは感じないものの、リブは目を見開き、怨嗟の声をあげた。


「このっ……クソがアァッ……!!」


 生に執着した不死者の、最期の瞬間。

 リブ=レグラントの第2の人生に終止符が打たれ、戦いの決着が着いた瞬間であった。


 私はゼトレルミエルを射ちはなったあと、その場にへたり込んだ。


 ……ものすごい威力。

 高台に群がっていたほとんどのゾンビを、漏らすことなく殲滅できたみたい。


 ただ、魔力の消費量がハンパない。

 1発でかなりの魔力を持ってかれたわ。

 1度の戦闘で使えるのは1回だけだと思う。


 それに、さすがにメルサがどうなったかまでは見えない。

 メルサは大丈夫だったのかしら?


 いや、その前にまずは自分の心配をしないと。

 少しでも体内の魔力循環を安定させるために、今はいったんどこかに身を隠さなき


「ヴフッ。ほかの人の心配をしてる場合かしら?」

「!!!!」


 背筋が凍り、総毛立った。

 すぐ背後にいた。耳元で声がした。

 

 位置関係を把握する暇もなく、全身を強い衝撃と痛みが走った。

 たぶん綿の鞭で殴られたのだと、あとから悟った。

 私は鉄骨の足場からはたき落とされ、どこか下のほうへと落下していったーー。




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